掲載日 : [2007-01-31] 照会数 : 7725
歴史アクション「墨攻」…新境地を開いた 安聖基
[ 安聖基(左)とアンディ・ラウ ] [ 笑顔でインタビューに答える安聖基 ]
韓日中合作映画の魅力を語る
韓・日・中+香港の映画人が手を組んで制作した、歴史アクション映画「墨攻」が2月3日から、全国松竹・東急系で公開される。戦国時代の中国を舞台に、平和を目指して戦い続けた墨家の一人、革離(アンディ・ラウ=46)と息詰まる頭脳戦争を展開する、趙の国の大将軍・巷淹中役を演じた韓国の国民的俳優・安聖基(55)。重厚な演技力で新境地を開いた安聖基にインタビューした。
「映画は共通言語」
国・民族を超える力を実感
−−韓・日・中・香港の共同制作によるプロジェクトに参加した感想は。
安 今までこのような機会を待ち続けてきた。難しい過程を通じて成し遂げた作業だからこそ、ある程度の成果を出すことが重要だと思う。この映画の評価によって今後、さらに合作映画が作られていくと思うからだ。
−−言葉の違いによるコミュニケーションの障害はあったか。
安 大きい障害があったとは思わない。一つ面白いのは、世界のどこの撮影現場に行ってもまったく同じ様子であることだ。「墨功」の現場も同じだった。俳優やスタッフの間で言葉は通じなかったが、お互いに目つきだけで通じるものがあった。それは映画という共通言語があるからだ。
−−アンディ・ラウとは初共演だったが、彼との呼吸はどうだったか。
安 今回の作品を通じて初めて彼と会った。現場で会った時、他人に対する思いやりがあり、周囲に対して気配りする姿が印象的だった。香港のトップスターでありながら、自分中心に行動する場面を見たことはなかった。
−−観客に長く愛される俳優になるための秘訣は。
安 個人の努力が何より必要だ。観客が望む魅力を維持していくためには、膨大なエネルギーが必要になる。実際には、盛んに活動すべき私の上の先輩たちがあまりいないことが気がかりだ。先日、映画「ラジオスター」で主演男優賞を受賞した時、誰かが50代の主演男優賞は初めだと教えてくれた。個人の栄光より、役者の幅を広げたと言うことが何より嬉しかった。
−−今後の抱負はなにか。
安 残りの俳優人生で良い作品に会って、観客に楽しさを与えること以外に望みはない。
在日同胞の方々、ぜひ観て下さい
−−在日同胞の映画ファンに一言。
安 日本という特殊な地域に暮らしている在日同胞の素晴らしさはずっと前から知っていた。今や民族や地域という形から脱皮して、全地球が一つになる時代だ。どこに住んでも自分のアイデンティティーを維持しながら一生懸命に暮らしていくのが大事。そういう意味でまさに「墨攻」は、一つの国に留まらない新たな色と味を出した映画だ。多くの在日同胞の方々に観ていただけることを期待している。
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共鳴を呼ぶ「反戦と平和」
映画「墨攻」は、今から2000年以上前の春秋戦国時代の話から始まる。趙と燕の国境にある梁城は危機に瀕していた。趙の10万大軍が燕に侵攻しようとしていたからだ。梁城の人口はわずか4000人。趙の大将軍・巷奄中(安聖基)と梁城を助けに来た戦略家・革離(アンディ・ラウ)の対決が描かれる。
「墨攻」は多くの謎に包まれている戦闘プロ集団「墨家」の一人、革離という男を主人公にした森秀樹(作者)と久保田千太郎(漫画脚本)のコミック「墨攻」(1992〜96年)が原作。小学館の「ビッグコミック」の連載では大反響を呼び、伝説のコミックとして今も語りつがれている。
同作品は当時、海外でも熱烈なファンを獲得。香港出身の張之亮監督が、構想10年にして映画化にこぎつけた。
この映画がほかの歴史物とひと味違うのは、壮大なスペクタクルやコンピューターグラフィックスを駆使しただけではなく、「墨家」の創始者で思想家・墨子の根底にある「反戦と平和」という意識が、物語の中核を成すからだろう。この作品は20億円という巨額の制作費を投入した大作であるとともに、師である墨子の思想に共鳴し戦う革離の生き様が、われわれの感性を刺激する。
(2007.1.31 民団新聞)