掲載日 : [2007-01-31] 照会数 : 10980
韓日共生の遺志 胸打つ…李秀賢さんの映画
[ 天皇も目頭抑え 秀賢さんの両親を激励する天皇ご夫妻 ] [ 「偲ぶ会」で遺影に献花する鄭進中央本部団長(左)夫妻 ]
李秀賢さん「あなたを忘れない」
7回忌に合わせ 特別試写会に天皇ご夫妻も鑑賞
東京・新大久保駅の列車事故で韓国人留学生の李秀賢さんらが亡くなってまる6年を迎えた命日の26日、東京のニッショーホールで秀賢さんらを描いた日韓合作映画「あなたを忘れない」の特別試写会が開かれた。韓日共生を願う民団も制作協力に名を連ねた映画の上映には、天皇ご夫妻や日本の国会議員のほか、中央本部の鄭進団長、金昌植監察委員長ら約700人が詰めかけ、26歳の人生を疾走した秀賢さんの「生と死」に改めて胸を熱くした。映画は27日から全国で上映が始まった。
未来志向を堅固に
民団が制作協力、後援も
上映に先立つ舞台あいさつで、花堂純次監督は「見ず知らずの人を救うために、異国でわが身を投げ出すことができるだろうか。秀賢さんの精神世界は、心の置き場がなくずっと不安を抱えている日本人にとって、大事な意味を持つと思った」と製作動機を語った。
映画の中には、秀賢さんが父親の生まれ故郷の大阪を訪ねるシーンがある。大阪は将来の展望を見出せなかった秀賢さんが、自分の進む道を決めた重要なポイントとして描かれている。
現地での撮影協力を求められた東大阪出身の呉龍浩・中央本部監察委員は、民団大阪本部に依頼、本部から生野西支部を紹介された。夫忠甫支団長と高信吉事務部長は、一昔前に1世が暮らしていたような古い家屋の斡旋やコリアタウン、御幸森商店街での円滑な撮影協力に尽力した。
「民団は文化事業にもっと力を入れるべき。嫌韓感情を煽る向きも一部にあるが、この映画は同胞と日本人の心をつかみ、韓日共生に拍車をかける」と呉委員。高部長も「地元が取り上げられて光栄。スクリーンを通して観たわが町を、同胞も日本人も誇りに思うのではないか」と期待を寄せている。
韓日友好を願うのは、韓国とのゆかり発言が注目された皇室も同様だ。8年ぶりの試写会鑑賞を楽しみにしていたという天皇夫妻。関係者によると、ラストシーンで天皇は2度ほど目頭を押さえ、皇后は膝に置いていた手袋をぎゅっと握りしめながらスクリーンに見入っていた。
上映後は「本当にいい作品をありがとう。日韓の新しい出発点になるといいですね」と花堂監督ら韓日の映画関係者に語りかけ、秀賢さんの両親には「命を落とされて残念ですが、本当に立派な息子さんですね」と慰労の言葉をかけた。また、両親と羅鍾一駐日大使の手を何度も握り、「韓国の人に感謝しています」と繰り返したという。
羅大使らが献花し「偲ぶ会」
試写会後には「偲ぶ会」が執り行われた。遺族への見舞金などを元に02年1月に正式発足した李秀賢顕彰奨学会の谷野作太郎会長は、「命の大切さが軽くなっている今の日本のささくれだった世情に欠かせない、限りない人間愛、勇気、優しさというメッセージが込められた教育映画だ」と完成を喜んだ。同奨学会では現在、約300人の留学生に奨学金を与えており、この映画の収益の一部が会に寄付される。
秀賢さんの両親、李盛大さんと辛潤賛さんによる献花が始まり、羅鍾一駐日韓国大使、安倍昭恵総理夫人、福田康夫元官房長官らが続いた。民団からは鄭進団長夫妻、李時香東京本部団長らが遺影に白い菊を捧げた。
両親は同日夜、新大久保駅を訪れ、事故が起きた7時15分に合わせて駅構内の顕彰碑に花を手向け、事故現場のホームで合掌した。
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廣尚南道道民会 鑑賞を支援
東京慶尚南道道民会の金昭夫直前会長(中央執行委員)は25日、「釜山出身の秀賢さんを偲ぶとともに、韓日共生にかけた故人の遺志に報いたい」として、鑑賞券200枚の購入を宣伝局に申し出た。2月3日に開かれる道民会の新年会で来場者に配布する。
(2007.1.31 民団新聞)