宣伝機能を強化し 苦境克服の尖兵に
民団PRの能力開発こそ
民団中央本部の経費節減の主な対象として、巨額にのぼる機関紙・民団新聞の普及経費が俎上にある。しかし半面で、財政上の困難を克服し諸活動を軌道に乗せるには、より強力な宣伝活動が求められてもいる。
迫られる効率性
機関紙を柱にした従来型宣伝活動は、二律背反する厳しい状況にある。相互に矛盾する2つのテーマを発展的に統合・追求しなければならない。低コストでも効果をあげる、効率的な宣伝活動とはどうあるべきか。運動論の観点から突き詰める必要に迫られている。
民団の宣伝活動の基本目的は①理念と事業内容を、組織内部に周知徹底させ、外部に広く知らしめ②団員のモラル向上と結束を促し③各方面の理解と協力を得るべく世論を喚起しつつ、各事業が活発に展開されるよう後押しするところにある。
既存の宣伝手段のなかでは①民団新聞とそのホームページがもっとも大きな存在であり、ほかに②地方本部・支部などの広報誌・紙など活字媒体やホームページ③中央・地方作成の事業目的に応じた各種パンフレットなど不定期出版物がある。これだけで充分とは言えない。④団員に直接届く行事案内や団費納入をお願いする文書などを含む各種公文⑤民団フェスティバルや写真展など各種イベントも重要な宣伝手段である。そこから一歩進んで、⑥民団の諸活動そのものが効果的な宣伝手段になり得るとの意識を、より強く持たなければならない。
これら宣伝活動は、力量を注ぐべき方向によって、対内系統と対外系統に大別することができよう。この2つは相互に重なり合うが、目的意識は明確に区別されるべきであり、それに応じて、宣伝手段の活用方法も工夫されるべきだ。
運動体であれば一般的に、共通の目的意識と、組織外の人々と自らをはっきりと区別する共通規範がある。その2つを形成するのは、周囲とは異なる共通の情報環境であり、組織構成員だからこそ得られる情報の不断の提供だ。④を除くすべての宣伝手段が団員と非団員とを差別化していない以上、これを充足させることはできない。機関紙などを通じた地域単位での学習会のほか、幹部や熱心な団員を対象にした定期研修などを通じての独自情報の提供が大切になる。
外部系統についてはどうか。これには、宣伝手段のうち④を除くすべてが該当する。機関紙など出版物の重要性は言うまでもないが、今後は⑤と⑥の手段をより意識的に活用すべきである。恒例であるか新規であるかにかかわらず、事業のパブリシティーリリースが決め手になる。これは、団体や企業が広報活動の一環として自己の活動を周知させ、好意的態度をつくらせるよう積極的に報道関係者に情報を提供し、メディアに話題として取り上げさせようとする活動のことだ。
メディア活用も
たとえば、鳥取本部が推進する高齢者福祉で、「アジメ奉仕隊」が大きな役割を果たしている。独居老人に温かい食事を差し入れ、話し相手になり、身の回りのこまごました世話をやくこの活動は、地元紙に再三紹介され、民団のイメージを向上させた。民団はこれぞという事業について、同胞言論機関はもちろん、日本のメディアに好意的に扱われるよう、意識的に対応したい。
私たちは、宣伝活動に対するイメージを一新すべきだ。キーになるのは、民団組織内部の諸関係はもちろん、民団と外部世界との諸関係を良好にするための「コミュニケーション能力の開発」という発想である。
民団のこれまでの宣伝活動は、どちらかと言えば、一方的に情報を流すことに偏りがちであった。今後はいわゆるPR(public relations=大衆・公衆、ひいては各社会との関係を向上させ、良好なものにする活動)によって、中央本部と地方本部・支部はもちろん、民団と全在日同胞社会、さらには民団と韓日両社会の双方にメリットをもたらす方向で、諸関係を良好にしていく努力がいっそう必要になる。
必要な相互研鑚
対内系統でもそれを揺るがせにせず、中央本部‐地方本部‐支部の幹部による双方向の意思疎通を密にし、問題意識の共有を徹底するほか、団員に直接届く文書の重要性にも注意を喚起したい。団費納入をお願いする文書でも、内容は地域によって差があり、事務的な文言で終始しているものもあれば、活動実績と組織の実情を訴え、読み手の感情に寄り添おうとするものもある。行事案内の文書でも、身体の不自由な団員が参加を希望すれば、車で送迎するサービスを明記する支部もある。相互研鑽を重ねるべきであろう。
対外系統について言えば、民団の共生理念に基づいた諸活動は、パブリシティーリリースの材料に事欠かない。日本社会は国際化、多文化共生時代に向かわざるを得ない実態にあるにもかかわらず、制度的、情緒的に多くの障壁が残されている。私たちのこれを突き崩す努力は、民団と日本社会の双方にメリットとなるからだ。
地方参政権獲得運動についても、国会議員との折衝や集会・デモなど、直接的な働きかけはもちろん、間接的なアプローチの有用性をこれまで以上に重視すべきだろう。自治体・市民団体との連携のもとに、外国人の地域定着や大災害時の防災対策支援を含む多文化共生事業を通じて、民団の存在感を示すことが肝心だ。メディアを介して、民団の共生理念の露出度を高める効果は大きい。
しっかりしたコミュニケーションには、言葉そのものだけでなく、それを発する際の声音の調子や表情のすべてが動員される。民団のPR活動もそれと同じく、機関紙などの出版物が中軸ではあっても、事業の意義を身体全体でアピールする心構えが要求される。
(2007.2.7 民団新聞)