掲載日 : [2007-02-28] 照会数 : 7410
調停委員・司法委員の日本国籍 必要なしが9割
東京弁護士会会員アンケート結果
家事調停委員・司法委員の任官にあたって国籍要件は必要なのか。東京弁護士会「外国人の権利に関する委員会」が会員全員を対象にアンケート調査したところ、回答者の9割が「不要」としていたことが26日までに明らかになった。今回の調査結果を踏まえ、同委員会では、日弁連および各弁護士会が裁判所に対して「不合理な差別的取り扱い」を是正していくよう求めている。
在日韓国人弁護士が仙台、兵庫、東京の各弁護士会から調停委員・司法委員への推薦を受けながら裁判所から就任を拒否されたという事件は、03年と06年で計3件が確認されている。
調停委員の資格としては「人格識見の高い40歳から70歳未満の者」というだけで国籍はなんら要件にはなっていない。外国人の就任を阻んでいるのはいわゆる「当然の法理」だ。外国人の司法参画は日弁連の宣言事項でもあるだけに、事態を重く見た東京弁護士会では「外国人の権利に関する小委員会」が中心となって06年2月、所属弁護士全員にアンケート用紙を郵送し、日本国籍の要否について回答を募った。
115通の有効回答のうち、家庭裁判所の家事調停委員は「不要」103人、「必要」10人。簡易裁判所の司法委員就任でも「不要」が105人を数え、「必要」は9人だけだった。いずれも9割の大多数が就任拒否に否定的な見解を示していた。一方、日本国籍を持たないがために調停委員・司法委員にはなれないことを知っていたのは半数もいなかった。
9月には各裁判所から08年度の調停委員の推薦依頼が単位弁護士会に来るという。外国籍会員の司法参画推進に向け06年10月、近畿弁連内にプロジェクトチームを立ち上げた吉井正明さんは、外国籍会員を調停委員・司法委員として積極的に推薦するよう呼びかけている。これからも外国籍会員の就任を拒否する事態が続けば、国連人権委員会への報告も辞さない構えだ。
現状改善訴える…当事者の梁弁護士
兵庫弁護士会所属の梁英子さんは26日、東京・千代田区の弁護士会館で開かれた「人種差別撤廃に向けた国際的な取り組みの最新動向と日本の役割」と題した講演会に出席し、「現状を変えていく力になってほしい」と支援を訴えた。この講演会は日弁連と東京弁護士会が共同主催した。
梁さんは弁護士登録をしてから今年で11年目。最近になって当事者間の話し合いで解決を見いだす調停委員の仕事こそ天職と信じるようになったという。それだけに家事調停委員就任に強い意欲を燃やしている。
梁さんが兵庫県弁護士会から家事調停委員の推薦を受けたのは03年10月のことだった。「市民として役だつ」「地域ボランティアとまったく同じ感覚」で任官を期待していた。ところが、神戸家庭裁判所は「最高裁にはねられたら面倒」とばかり、梁さんが日本国籍を有していないことを理由に最高裁に上申しなかった。
(2007.2.28 民団新聞)