掲載日 : [2007-02-28] 照会数 : 7669
<民論団論>北韓の核廃絶をなぜ訴えるか 金一男
北韓の核廃絶をなぜ訴えるか 民団川崎支部議長・金一男
北韓による無謀な核兵器開発は在日同胞の生活にも暗い影を落としている。寄稿者は「北朝鮮の核廃棄を求め在日コリアンの人権を守る会」の世話人代表の1人で「在日の時調(三行詩)の会」の幹事。
在日同胞の人権守り韓国の転落を防ごう
北当局は、北人民を大量に餓死させながら核武装を進め、ついに昨年10月、核実験という暴挙に出ました。国際的な孤立のなか、6カ国協議でとりあえずの合意に同意しましたが、しかし、問題の根は深いと言わざるを得ません。それは、北当局の核兵器開発計画が、「軍事優先」という軍国主義の国家的な体質からきているからです。
子供らへの風圧
思えば私たち在日は、北の攻撃的な国策のためにどれだけ被害を受けてきたでしょうか。拉致問題しかり、ミサイル乱射や核実験しかりです。私たちは今、北の同族として冷たい疑惑のまなざしを受けています。とりわけ、子供たちへの風当たりが強まっています。
北社会の今日の困窮は、独裁的な首領制度による「全国土の要塞化、全人民の武装化」という朝鮮労働党の誤った路線から発生しました。そして、「先軍政治」によって増幅されたものです。革命ゴッコに浮かれてまともな国家経営をかえりみず、国家体系は瓦解しました。
北の権力は、その体質を変えることなしに、この局面をくぐり抜けることはできません。権威主義を確実に後退させ、市場経済を通じて人々の自由を拡大し、洗脳された人々にその自主性を回復させなければならない。表面の制度だけをいじくっても無駄です。権力の性格そのものを変えねばならないのです。
ところが、今なお北当局に人民の幸福は眼中になく、権力維持しか頭にありません。だから今も、指導者礼賛の偶像崇拝扇動をあきもせずにやっています。北の工作員やシンパを総動員して、個人崇拝扇動や、先軍政治をほめたたえるネット攻勢を韓国でしかけています。これは、国家保安法撤廃、米軍撤退、韓米FTA交渉の無条件反対、そして民族共助最優先などの運動と表裏一体の戦術を形成しています。
そんなやり方で、生産的な産業構造を再建できるでしょうか。今のところ、彼らにいくら金や物を与えても、少数の支配層の腹を肥やすだけだ、という専門家たちの主張には説得力があります。人道支援の食糧ですら、本当に必要な末端住民には届いていないのです。
相互主義に立て
この10年あまり、湯水のように北へと流れた資金や物資は、四千八百万韓国国民の日々の労働による血と汗からでたものです。また、韓国の経済的発展のゆえに可能だった援助です。韓国は金のなる木を持っているわけでもありません。北当局が南に過大な要求を続けて困らせるなら、韓国経済が失速する可能性さえあるといわれています。
もし韓国が再び政治的混乱と貧困におちいれば、私たち在日同胞の立場は一体どうなってしまうでしょうか。実際に、韓国国民は今、国土統一への希望どころか、韓国というかけがえのない母国の安全保障に重大な懸念を抱いているのです。
北が南からの援助を期待するなら、北社会の再建が南にとって脅威でないこと、それを証明してみせねばなりません。また、北が支援に値する対象であり、その支援が有効に生かされることを証明してみせねばなりません。対南政治工作への幻想を捨て、南北関係における相互主義の原則を受け入れなければなりません。
私はその第一歩が、北の在外政治組織の自己解体にあると考えます。今までも北当局は、莫大な資金と有為の人材を在外政治工作組織に投入してきました。不毛な工作活動に浪費されている資金と人材は、本来の正常な経済活動と国家の実務的な経営にもどされるべきです。
私たちがその在外工作組織やダミー団体を決して許さないことを、北当局は知るべきです。
(2007.2.28 民団新聞)