掲載日 : [2007-03-14] 照会数 : 10314
歴史副読本 初の通史『韓日交流の歴史』完成
[ 1日に同時出版された韓国語版(上)と明石書店発行の日本語版 ] [ 君島和彦東京学芸大学教授 ]
両国の研究者・教員10年がかり
ナショナリズムを超えて
歴史観共有へ努力
君島和彦東京学芸大学教授に聞く
韓日双方の高校生を主な対象とした歴史の副読本『韓日交流の歴史』が1日、両国で同時出版された。この種の副読本としては初の通史となる。両論併記をあえて避けたのもこれまでにない試みだ。両国の研究者・教員が10年がかりで完成させた。日本側の編集委員を務めた東京学芸大学教育学部の君島和彦教授(日本史)に副読本の意義などについて聞いた。
教材の完成まで、両国で15回のシンポジウムを重ねてきた。先史から現代まで時代別に6つの部会を構成、計36人で「どういう表現にすれば、両国の高校生に理解してもらえるか。双方が一致できる表現を追究した」。日本側の中心メンバー、君島和彦東京学芸大学教授は「双方とも自分の主張よりも、相手の立場に立って、双方の歴史教科書に欠けた記述を補うようにした」という。
君島教授は「日本式発想法で押しつけていくのがナショナリズム。お互い知ってほしい歴史観を共有するというのは、これまでになかった視点では」と強調した。
これは02年から韓日両国間で始まり、第1期は双方の主張を併記するだけで終わった歴史共同研究に対する間接的な批判ともいえる。君島教授は、双方が国家を代表してお互いの主張を言い合う限り、歴史認識の一致などありえないという。
韓国併合をめぐる合法か非合法かの評価、個人請求権の有無、「従軍慰安婦」の強制性や独島(竹島)の領有権などでは記述に苦労の跡がうかがえる。この点について君島教授は「自国の歴史の正当性だけを主張する立場からは妥協的とみえるかもしれない。しかし単なる妥協ではない。2つの国の歴史の共通認識を探ると、自国の歴史を見直さなければならない点に気づかされる。研究論文では合意できない歴史の共通認識を教材という形式をとって実現しようとした」と話している。
10年間の歳月を経て日本側は韓国語を学び、韓国側は日本語を学ぶようになった。当初はテキストを翻訳するのに留学生の手を借りたが、回を重ねるうち双方とも各メンバー自ら翻訳できるくらいに習熟したという。
在日韓国人史も
完成した共通教材には韓国国内の教科書ではほとんど触れられてこなかった在日韓国人や市民運動の歴史が盛り込まれた。解放前、韓国国内の民芸を愛した浅川巧や貴重な建造物の保護を主張した柳宗悦らの活躍も取り上げた。君島教授は「中学と高校の教員からまず読んでほしい。韓日の狭間を生きる在日の人たちにもいっぱい読んでほしい」と話している。
A5版464㌻。明石書店刊。2800円(税別)。℡03・5818・1171。
(2007.3.14 民団新聞)