掲載日 : [2007-03-28] 照会数 : 11046
朝鮮通信使400周年 記念事業スタート
映画制作、図録共同出版も
江戸時代の朝鮮通信使訪日から400周年を祝う事業が22日、都内で開かれた「記者懇談会」を皮切りにスタートした。事業概要もこの日、縁地連絡協議会(会長、松村良幸対馬市長)から正式に発表された。主な取り組み自治体は奈良県、静岡市、彦根市、千代田区など1県7市1区におよぶ。これらの地域は4月から向こう1年間、善隣友好一色に染まる。
静岡市は徳川家康の駿府城入城400年祝祭とも重なるだけに、とりわけ力が入る。歴代の通信使が市内の清見寺に遺した詩や屏風絵、墨書などを4月にも『清見寺所蔵遺物図録』として刊行する。これは釜山の朝鮮通信使文化事業会との共同事業となる。
このほか、青少年向けの教育映画「駿府発・21世紀の使行録‐朝鮮通信使」(静岡市・同制作委員会、山本起也監督)の撮影も急ピッチで進んでいる。上映時間は1時間ほど。コンピューター・グラフィック(CG)を駆使した斬新な映像効果が見物。5月19日に清水テルサホールで完成試写会を開く。
滋賀県彦根市も彦根城築城400年祭記念行事としての位置づけだ。10月7日には朝鮮通信使ゆかりのまちの代表者が全国から集まり、市内でシンポジウムを開催する。対馬市でも7月19日からの4日間、韓日両国の青年30人が通信使について学びながら、意見交換する「通信使外交塾」を開講する。学校が夏休みに入る8月には韓中日の小中学生が善隣友好の歴史を学びながら交流する「21世紀の日中韓子ども通信使&遣隋使2007」が開かれる。釜山と西安・上海の児童・生徒が日本で合流し、彦根、京都、奈良、下関などを訪問、親善交流を図る。奈良県では子どもサミット(仮称)を開催し、国会へ親書を届ける。
国土交通省地方運輸局でも「ビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)」の一環としてこれらの関連事業を資金面で積極的に支援していく。また、1月の韓日政府間合意に基づき、定期航空路線を有していない都市間でチャーター便を活用した「相互通信使(仮称)」を派遣・交換する事業も実施していく予定だ。
この日の記者懇談会では静岡県の朝鮮通信使400周年記念事業推進委員会委員長に就任した金両基さんが「朝鮮通信使400周年と家康の平和外交」と題して記念講演を行った。韓国大使館から黄鉉卓公使、超党派の朝鮮通信使議員懇からも事務局長の原田令嗣衆議院議員らが出席した。
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ソウルで三使任命式 昌慶宮明政殿
韓国では4月15日、ソウル市内の昌慶宮明政殿で三使任命式を行う。日本からも議員懇を代表して河村健夫会長をはじめとする国会議員7人が出席する。
三使とは朝鮮国王から日本に派遣された正使、副使、従事官を指す。任命式は宮中の儀礼法式である国朝五礼儀に則って行われる。文武百官と儀礼を執り行う臣下たちが見守るなか、国王が三使を任命し、国書を伝達する。再現行列は歩行者天国でにぎわう仁寺洞で行う。今年度正使には朝鮮通信使国会議員連盟幹事の朴珍議員が扮する。
釜山市では5月4・5の両日、400周年記念行事を開く。会期中、金両基さんが基調講演を行う。龍頭山公園から光復路入り口まで朝鮮通信使平和の行列が行進する。
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朝鮮通信使とは
豊臣秀吉の朝鮮侵略によって途絶えた国交を回復するため近隣諸国との友好平和を願う徳川家康が朝鮮側に申し入れた。朝鮮から派遣された総勢4〜500人の使節を朝鮮通信使と呼ぶ。
「通信」とは「信(よしみ)を通わす」という意味。信頼関係に基づいた善隣友好を象徴している。1607年から1811年までの約200年間、幕府の慶事や将軍の代替わりごとに国書を携えて12回訪れた。
朝鮮通信使は両国の教科書でほとんど触れられず、「消された歴史」ともいわれてきたが、90年に来日した盧泰愚大統領が宮中晩餐会のスピーチで雨森芳洲の「誠信の交わり」を取り上げてから一躍脚光を浴びた。
(2007.3.28 民団新聞)