掲載日 : [2007-04-04] 照会数 : 12084
フラッシュ同胞企業人(1) 「クレームなし」に誇り
コツコツと物づくり一筋に取り組んだり、アイデアで新ビジネスにチャレンジするなど、意外な職種で活躍する同胞企業人は少なくない。キラリと光る同胞企業人をシリーズで紹介する。
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樋受け金具でシェア40% タカヤマ金属工業 高昌照会長
マイホームを建てるのは庶民にとって大きな夢。その木造家屋に欠かせない樋(とい)受け金具を半世紀にわたりつくり続けてきた。いまでは全国シェアの40%を誇る。
地震で強さ立証
「高校卒業後、父が経営していたのを一時期手伝い、1955年に独立してから金具造り一筋で来た。樋受け金具の径は住宅メーカーによってわずかずつ違うため種類が多く、職人は数種類の金具を常時携帯するのが普通だった。それを1種類だけで対応できるように工夫した。どうすれば便利になるか、使いやすさをいつも考えている」。研究開発を重視し、取得した特許件数は数知れない。
もう一つの目玉商品が鋼製束(こうせいづか)。家を水平に調節するもので、シロアリの問題が発生してから木材に取って代わった。優れた耐久性と高品質で作業時間の短縮、大幅なコストダウンを実現し、87年に初出荷以来、クレームがないのが誇りだ。地震にも強く、新製品のターンバックル式に切り替えたころ、阪神大震災が起こり、強さを立証した。今では月間60万本を販売する。
59年にメッキ工場を併設し、現在地の生野区巽中に本社工場を新築したのは69年。小さな工場が密集する準工場地帯だが、「ISO14001(地球環境認証)を取得し、環境問題に関しては万全の態勢で臨んでいる」。ほかに富田林と美原に工場を運営し、06年度売上は約75億円。
きらめき賞受賞
「中小企業は技術、人材が命だ」と強調する。そのため社員の待遇や福利厚生の改善に努めてきた。創業当初から社員専用の保育所を運営し、女性が働きやすいように心がけてきた。半世紀に及ぶ保育所の運営が評価され、今年2月、大阪市から「きらめき企業賞」を受賞した。
7階建てマンションの社員寮は、3LDKで家賃3万9000円。一般と比べて3分の1の安さだ。パートを含め約300人を数える社員のうち、20〜30年の勤続者はざらで、親子で勤務する社員もいる。
3年前から近畿経友納税連合会の会長を務め、1昨年には大阪国税局局長賞を受賞した。
3年前、長男を社長にし、会長に就任したが、今なお8時過ぎには出勤し、作業着に着替えて仕事をこなす。現場重視は当分続きそうだ。
「中国経済などの急成長で資源の枯渇が懸念され、材料費が急騰している。これから物づくりで企業を伸ばしていくのは大変だ。しかし、次男が営業のトップ、3男が工場長と分担しているので、〞3本の矢〟が先頭に立って模範を示せば、堅実に発展できるだろう」と自信を示す。「木造住宅の金具はタカヤマだ」と呼ばれることが子どもたちに託した夢だ。
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プロフィール
高昌照。1933年大阪生まれ。73歳。興国商業高校卒。3年前から近畿経友納税連合会会長。趣味は野球、ゴルフ。子どもは3男1女、孫13人。
(2007.4.4 民団新聞)