掲載日 : [2007-04-04] 照会数 : 9933
<中央民族教育委員会>共生教育後退させまい
[ 改定・教育基本法に警鐘を鳴らす俵義文氏(3月29日、中央会館) ]
「架け橋」の群像教材に
小・中学生向け 来春発行…民族教育委
民団の特別委員会の一つ、中央民族教育委員会(李愚京委員長、京都国際学園理事長)は新たに小(中)学生向けの教材冊子を発刊することを決めた。母と子が一緒に読める簡易な学習教材を目指しており、07年度中の出版を予定している。また、「MINDAN文化賞(仮称)」には4部門を設ける。3月29日に韓国中央会館で開いた第3回全体会議で確認した。
教育基本法の影響にらみ
民族教育委では、教育基本法改定によって国家主義を鼓舞する動きが強まるなか、ともすれば置き去りにされがちな隣国との共生の重要性を訴えるため冊子発刊に踏み切った。名称は『韓日の架け橋となった人たち(仮称)』。韓日の架け橋となった人物の伝記物語で、在日の母と子どもが一緒に勉強できる共感・感動のエピソードを中心に編集していく考えだ。
提案者でもある金廣照委員(民団神奈川県本部副団長)が例示した人物は、漢字を伝えた王仁、プロレスの力道山、プロ野球の張本勲、経済人の辛格浩、対馬で朝鮮通信使の接待にあたった雨森芳洲など。韓半島から日本に渡ってきた人など4〜5人、在日10人(組)ほど、日本人4〜5人の計18〜20人ほどが候補として挙がっている。
近く小委員会を立ち上げて制作に向け具体案を詰める。冊子にはなぜいまこの時期に出すのかを記した序文、ないしはあと書きを付ける。07年中に執筆・編集を終え、出版は08年2月を予定している。出席委員の朴一副委員長(大阪市立大学大学院教授)をはじめとして全員が賛成の意思表明をした。完成すれば日本人の小・中学生と保護者にも勧めることのできる国際理解教育の教材としての活用にも期待がかけられている。
この日の会議ではまた、すでに実施の決まっている「在日同胞の子育てに関するアンケート」と「MINDAN文化賞(仮称)」についても詳細を詰めた。
子育てアンケートは在日2・3世の保護者に対し、民団および民族教育委員会としてこれから何ができるのか、具体的な支援策を考えていくための資料・指針とするのが主な目的。質問事項には新たに民族学校にどのような教育を望むのか付け加え、いじめ体験や就職差別体験についても聞くことで一致した。
第61回定期中央委員会で承認済みの「MINDAN文化賞(仮称)」については、論文、詩歌(短歌・俳句・時調、自由詩)、写真、孝道エッセイコンテストの4部門を設けることを決めた。
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在日側で対案づくり 教育現場への憂慮も強く
民族教育委員会はこの日、昨年12月に公布施行された日本の教育基本法が在日同胞をはじめとした在日外国人へどのような影響を及ぼすのかについても論議した。
席上、委員からは「外国人のことが一言半句触れられていない」(李愚京委員長)ことを憂慮する声が相次いだ。朴一副委員長は「最低限守ってほしい、われわれの側の教育基本法ともいうべき対案を早急に出していく時期に来ている」と提案。具体的には、学校であたりまえに本名を名乗っていける環境づくりを例として挙げた。論議の末、たたき台となる文案は中央民族教育委員会で起草し、近く民団中央本部から文部科学省に提出することになった。
また、会議に先立ち開いた教育基本法に関する学習会では、俵義文「子どもと教科書全国ネット21」事務局長が講演した。俵事務局長は「学習指導要領にも愛国心が盛り込まれることになれば、社会科すべての教科書が『つくる会』のような教科書になってしまう。在日やニューカマーの教育をどうするのか、各地で教育委員会に働きかけていく必要がある」と強調した。
(2007.4.4 民団新聞)