掲載日 : [2007-04-25] 照会数 : 11637
教育院 民団に薫風
[ 手作りの「土曜学校」教材を手にする尹裕淑院長 ] [ 同胞と日本人の交流の場、和歌山のポジャギ教室 ]
■□
初の女性院長が千葉に…工夫こらし教材手作り
駐日韓国教育院に女性が進出し、前任者に負けじと活躍している。先鞭を付けたのは大阪韓国綜合教育院和歌山分院の教師、李鍾玄さん(47)。李さんに続いて2月に赴任してきた千葉教育院の尹裕淑さんは女性としては初の院長だ。2人とも女性らしいしなやかで繊細な感覚が地元で好評を博している。期待と不安の交差するなかでその活躍を見守ってきた駐日大使館首席教育官室もいまはほっと一安心といった表情を見せている。
【千葉】千葉韓国教育院の尹裕淑院長は30歳代と、全国11の教育院長の中では最年少だ。当初の赴任候補地は千葉を含む3カ所だった。千葉は都心に近く、他の2カ所の教育院よりも激務が予想されたが、あえて千葉を希望した。こんなところにもスペシャリストとしての尹院長の自信と気負いがうかがわれる。
韓国語教材にはこだわった。自費で初心者用の「イグル(イージー・ハングル)」10セットを購入して教育院に持ち込んだ。これは遊びながらカナタラを覚えるもので初級教室で好評だ。
3月には4月からオリニ土曜学校で使う千葉教室独自の教材を自ら製作した。それも1種類ではない。オリニの年齢に合わせて「ケナリ」「チャンミ」「ナンチョ」の3クラス分を1カ月という短期間でつくりあげた。
家には幼子が待つ身。家事の合間を縫っての執筆がいかに大変だったかは想像に余りある。しかし、尹院長は「学校に戻った気分」とむしろ楽しんで没頭したかのような様子。民団千葉県本部もそんな尹院長の頑張りに応え、教材製作費などを負担した。土曜学校では在日の父母にそっと寄り添い、悩みの解決に取り組んでいる。
韓国語講座は2日から始まった。尹院長は韓国と日本の微妙な文化の差を体感してもらおうと、韓国の人気アニメやドラマ、Kポップ、ゲームを取り入れるなど独自色を打ち出している。これは尹院長自身、アニメやドラマを通して日本の文化に接し、嫌日派から知日派に変わっていったという体験があるためだ。
県内で韓国語講座の指導にあたる講師陣を一堂に集め、指導法のレベルアップのための研修も計画中。韓国から専門の講師を招聘することにしている。千葉ではかつてない試みだ。
このほか、青年会千葉本部と韓国人留学生間のスポーツを通した相互理解、日本人の歴史研究者と韓国の研究家との交流などを思い描いているという。
尹院長はソウル市出身。明女子大学で日本語を専攻した。教員時代に奨学士試験に合格し、教育部に入庁した。日本では教頭に匹敵する。
■□
独自行事で会館に活況…和歌山でも女性教師が奮闘
【和歌山】大阪韓国綜合教育院和歌山分院の李鍾玄さん(47)は教師として選抜されたが、和歌山では1人運営体制のため実質的な「院長」だ。昨年2月に赴任した。
その年の夏、「韓国のことなら言葉だけでなくなんでも味わいたい」という韓国語講座に通う生徒の要望に応え、韓国映画の無料上映会を開いたところ会場は連日満員。4日間で述べ200人を集めた。「本部にこれだけの地域住民が来たのは初めて」(朴哲夫民団和歌山本部団長)だった。
会場ではかき氷のパッピンスも来場者の心をとらえた。「パッピンスを楽しみに来た」と4日間通った人もいた。李院長は「こんなに韓国への関心が高まっているのに、その受け皿が韓国語講座だけというのはもったいない。みんなに楽しんでもらうため次はなにをしようかと思うようになった」という。
秋にはポジャギ教室を開講。参加者から「同胞同士や日本人との交流が増えた」「大阪まで出なくてもよくなった」と喜ばれた。
李院長は「民団の理解と協力、婦人会の手伝いがあってこそできた行事」と控えめ。婦人会和歌山県本部の厳正子会長は「多くの人が出入りすることで民団の活性化につながる」とエールを送った。5月からは一般団員を対象に韓国語と歴史を学ぶ「同胞教室」を開講する。
(2007.4.25 民団新聞)