掲載日 : [2007-04-25] 照会数 : 7884
フラッシュ同胞企業人(3) 仮想工場ネットで結ぶ
[ 1964年大阪生まれの3世。大阪工業大学機械工学科卒。95年に創業、本社は八尾市。大阪市のものづくり再生会議委員、大阪工大と阪南大の客員講師を務める。2男1女。 ]
国際ものづくりネットワークを推進する
㈱オーテック 呉仁鎬社長
「3日で金型製作、4日目で試作・成形」。3次元CAD(コンピューターによる設計)を活用して樹脂材料で試作品をつくってメーカーなどに提案する。設計・開発から試作品完成までの期間を大幅に短縮した。
製品のライフサイクルが短くなるなかで、商品開発コストの低減や多品種少量生産を可能にしたのは、インターネットを活用した情報発信・受発注サイトの構築だ。世界の約10万社からなる仮想工場をネットワークで結ぶことでビジネスは無限大に広がった。中小企業ながらも大手メーカーから一目おかれる存在だ。
原点は「町工場」
「1階が工場で、2階が住まい。それが私のものづくりの原点」。町工場が居並ぶ東大阪で生まれ、育った。「父はハンドバックの縫製業をやっていたし、周囲もほとんど同じ。だから、将来は技術を勉強し、工場を建てるのが夢だった」。
91年に独立して樹脂プラスチック加工業を立ち上げた。IH炊飯器に使われる特殊なモールド基盤(松下電器賞受賞)や、世界で最も薄い携帯電話用電池ケースなどを開発し、最初の5年間は順調に伸び、工場も拡張していった。
ところが機械が増え、人が増えると管理に追われ、設備投資しても償却する前に次の設備投資をしなければならず、借金だけが増えた。「自分が設備に注力する時代ではない」と思いはじめたころ、インターネットが95年から普及し始めた。そこで考えついたのが、「世界中に機械があるのだから、そこに発注すればよい。各社が得意分野を持ち寄ればどんな注文にも対応できる」と。
2000年に世界の工場をインターネットでつなぐ「ものづくりタウン21」を立ち上げた。金型や部品など中小の工業製品メーカー向けの受発注サイトで、アジアを中心に世界から申し込みがあった。
これが02年に日経インターネットアワード賞を受賞し、にわかに脚光を浴びることになる。大阪市ものづくり再生会議や関西ふるさと懇話会のメンバーに委嘱された。
工場を順に処分し、今では東・西日本、韓国、香港、中国に拠点をおき、設計・デザイン・開発を専門に行っている。提案した商品は数百点に及ぶ。社員は約150人、06年度売上は約15億円。
大阪から世界へ
社名のオーテックは、「姓のオ(呉)、なにもないゼロ、地球・グローバルの3つの意味」に由来する。「新千年紀の挑戦者」を社の理念に掲げ、「変化する時代に果敢に挑戦し、小さくとも大阪発の国際企業になろう」と社員に話す。
忙しい中、大学の講師も務める。「若者に教えることはライフワーク。小中学校時代の先生に励まされた一言が今も忘れられないから」。「自分に国境はない」と言いながらも、「子どもには国際人である前にルーツはしっかり持たせたい」と語る。そのため、まず韓国語を習得させている。「参政権のないのが最も不都合だ。在外同胞として韓国の大統領選に1票投じたい」との思いが強い。
(2007.4.25 民団新聞)