掲載日 : [2007-05-16] 照会数 : 6447
<社説>「5・17」から1年の決意
信頼回復へ襟を正そう
民団を創立以来の危機に直面させた「5・17民団・総連共同声明」の発表から、明日で1年になる。民団を親北韓勢力の下部組織に変換させようとする画策は依然と存在し、その機会を虎視眈々とうかがっていることを改めて想起したい。
短時日で反故に
5・17声明は民団理念と団員の総意に背き、民主主義的な規約を踏みにじって敢行されたものであり、全国の地方本部や団員たちが激しい憤激に燃え、無効を宣言して立ち上がったのは、あまりにも当然であった。
河丙執行部中枢による強圧を跳ね除け、6月24日の第60回臨時中央委員会で白紙撤回を決議させると、7月6日には調印当事者である河団長もついに白紙撤回を表明し、総連の徐萬述議長に同日付文書で通知した。民団は5・17声明を短時日のうちに文字通り反故にさせ、さらには保身に汲々とする河執行部中枢を駆逐し、組織正常化への端緒を開いた。
7カ月間にわたって混乱を重ねた河執行部時代、創団60周年を組織活性化の跳躍台にする構想が頓挫させられ、民団中央に対する内外の信頼が著しく損なわれたばかりか、貴重な財政の浪費と人的消耗が強いられた。多大な犠牲を払った以上、私たちはそれを上回る対価の回収に全力を傾ける責任がある。
昨年9月21日の第50回臨時中央大会は、5・17声明とそれに先立つ4・24提議書(実質上、敵性団体・韓統連に善処をお願いする文書)は一体であるとし、「4・24および5・17事態調査委員会」を設置した。同委は約3カ月にわたる調査に基づいて、さる2月23日の第61回中央委で特別報告書を発表し、一連の事態は韓統連をその組織体のまま民団に引き入れ、民団を総連に奉仕する道具に仕立て上げて、北韓の統一戦線に組み込ませようとする策謀であったと指摘した。
教訓を組織化し
同調査委はまた、解散に際して「北韓・親北勢力・総連は、6・15実践日本地域委の看板を持つ韓統連を先兵に、2年後の民団中央大会で再び民団の指導権を乗っ取り、5・17事態を再現しようと目論んでいる」との認識を示し、警戒を怠らないよう呼びかけた。
私たちが、払った犠牲以上の対価を手にするためには、民団をむざむざと危機の淵に立たせた忸怩たる思いをバネに、2つのことを同時に遂行する必要があろう。
まずは一連の事態から教訓を導き出し、それを組織的に確認することで、同様の事態を未然に防ぐネットワークを築くことだ。直接的な関連情報の鋭意注視はもちろん、祖国統一や在日同胞の和合・再編問題についての見識を高めることも欠かせない。そして何よりも、共生理念を掲げる生活者団体の本来事業に注力し、現在の民団を奮起させ未来につなげることだ。
民団は総連からの転入や帰化者にも門戸を開放しているように、多様な価値観を持つ同胞の集合体である。排除の論理に馴染まないからこそ、民団の構成員は宣言・綱領の実践に参与し、規約を遵守することを決しておろそかにしてはならず、組織的な検証を怠ってはならない。
祖国統一について民団は、「人類共通の良識である自由民主主義の理念のもと平和的・自主的に達成」する方針を堅持している(宣言2項)。日本社会に対しては「尊敬される模範的な市民」となり、「共生・共栄の姿勢で地域社会の発展に」貢献することを謳っている(同5項)。
民団宣言は、祖国統一を「全社会の主体思想化と共産主義社会を建設すること」と規約に明記する朝鮮労働党の路線に忠実に従い、日本人拉致事件など北韓の国家犯罪に加担した事実が時を追って明らかになる総連中央の姿勢とは、本質をまったく異にする。宣言が指し示す理念は、組織と団員を例外なく律するものであり、進んでは同胞社会の和合・再編の基準ともなることを肝に銘じるべきである。
理念の血肉化を
組織の早期正常化という使命を背負って出帆した現執行部は、政府補助金問題などをめぐる逆風を受けながらも、ようやく正常軌道を走り出したところだ。全組織をあげて自立財政への基盤を固め、それを担保として、生活者団体の本来の務めである福祉・教育を中心に、同胞たちの自己実現をサポートする事業の充実を期している。また、全国的な戸別訪問と研修を通じて、意思疎通の深化と統一意思の形成を図りながら、多くの団員が民団理念によりいっそう透徹するよう最善を尽くす構えだ。
この2つの課業を一体で遂行することこそ、組織防衛の要である。危機の克服に底力を発揮した全国の団員たちと中央本部が支え合い、在日同胞社会の求心体にふさわしい信頼を回復するよう、今一度襟を正したい。
(2007.5.16 民団新聞)