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「脱北者」を送還させるな

 飢餓のために北韓から中国へ脱出し、韓国や日本への渡航を図ろうとした「脱北者」48人が中国公安当局に身柄を保護されました。報道によると、この中には「帰国事業」という美名の下に北韓へ渡った在日同胞母娘2人が含まれているといいます。

◆在日同胞母子の日本〞帰国〟を

 この報道を受けて民団は1月22日、日本外務省に、母子が北韓に送還されないよう中国当局に働きかけることと、本人らの意思に沿って再び日本で定住できるようにしてほしいという2点を要望しました。生命の危険にさらされる北韓への送還をやめさせることが緊急問題であるという観点からでした。

 この事件が報道されて以降、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)も21日、難民条約を批准している中国に対して、身柄拘束された人たちを送還しないことと国連職員による難民審査を認めるように求めました。また各国のNGOも同様のアピールを出しています。

 脱北者のほとんどは、飢餓による死の恐怖から身を守るために北韓から中国に越境した人たちです。米国の人権団体などによると、その数を少なくとも1万人、多ければ数10万人と推計しています。大変な数にのぼる脱北者が中朝国境付近であえいでいるのです。

 これまで北韓側が「不法越境者」として厳しく取り締まり、中国側も北韓との外交関係に配慮して、脱北者をかくまった者に罰金、密告者に報奨金を支払うなど取り締まりをエスカレートさせてきました。

◆脱北者の難民認定が急務

 この中には、「帰国者」として北韓では階級が低く、辺境に追いやられてきた「帰国同胞」や同行した日本人家族も含まれています。すでに脱北したうちの20数人が日本に帰国していることが明らかになっています。北韓に残る家族や親族、姻戚関係者が不利にならないようにとの配慮から、帰国の事実は最近まで隠されてきました。

 中国は、厳しい取り締まりで対応することで脱北者の抑止を図ろうとしていますが、飢餓による生死をかけた脱北は阻止できない状況にあると、中国紙でも報道されています。いずれにせよ今のままでは、多くの脱北者が韓国と日本をめざして決死の逃避行を続けることになります。

 根本的には飢餓を放置した北韓の体制が問われますが、まず中国が脱北者を経済難民として認定することが人道的見地からも必要でしょう。難民の保護は国際社会の周知事実です。中国が保護政策をとれば、国際社会も支援を惜しまないでしょう。また日本も、「帰国事業」を官民あげて推進した経緯からしても、北韓へ帰った9万人以上の元在日同胞たちの受け入れに対して、法的根拠をもって対応する必要があるのではないでしょうか。

 一日も早い対応が望まれています。

(2003.01.29 民団新聞)

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