掲載日 : [2007-06-06] 照会数 : 6007
民族の鼓魂50年の技で 金徳洙さん
[ 思いを語る金徳洙さん ] [ 今年3月、ソウル・世宗文化会館大ホールで開かれた「金徳洙の芸道50周年記念公演」のステージ ]
「サムルノリ」創始者の金徳洙さん
来月・日本9カ所で公演
今年3月、韓国伝統芸術の大衆化・世界化に貢献した功績が認められ「銀冠文化勲章」を受章した、超絶打楽器集団「サムルノリ」創始者の金徳洙さん。5歳で放浪の芸人集団「ナムサダン(男寺党)」に加わって以来、今日に至るまでパワフルな演奏活動を行ってきた。また80年代には在日韓国青年会の文化事業にも積極的に関わるなど、同胞社会とのつながりも深い。7月には芸道50周年を記念する日本公演「鼓魂、天壌を翔る」が、全国9カ所の会場で開かれる。現代のトゥンセ(名人)として歩む金さんに、50年間を振り返っての思いなどを聞いた。
「男寺党の粋、全て披露」
民団青年会との交流も再び
銀冠文化勲章の栄光は祖先らに
まずはじめに民族の伝統文化を守ってこられた今は亡き祖先の方々をはじめ、先輩や先生方、そして私をこの道に導いてくれた父に、「銀冠文化勲章」を受章したこの栄光を差し上げたい。
情報があふれる現代社会において、私たちが最も大事にしてきた民族的な精神と魂、そして身命を賭すということが世界の人たちに認められたことだと思います。さらにこの文化を担っていくという使命感を持ち、最善を尽くしていきたい。
私は1957年に韓国の歴史のなかで最後まで生き残った遊行専門芸人集団の「男寺党」に入門したことを光栄に思っています。どの民族にもその民族だけが持っている気質や文化があります。この男寺党は朝鮮朝時代の両班の時代に言いようのない蔑視や差別を受けながらも、素晴らしい芸術を継承してきました。
男寺党で芸術を習えるようにして下さり、また国楽の先生方と、いいときも悪いときも一緒に過ごせたことは、その後の私の人生にとって、大きな勉強となりました。
記念に新しいプログラムで
今回の日本公演では50周年を記念した新しいプログラムを用意しています。特に、私が長い間演奏をしていなかったソンバン(立って演奏)と、チャンゴ散調のソロを2曲用意しています。私の50年間の全てをお見せしたいと思いますので期待して下さい。
民団の青年会のことを思うととても感慨深い。青年たちの民族的自尊心やアイデンティティーを高めるために、彼らが挙行した「85青年の船」で、サムルノリが持っている精神をもとにワークショップを開き、初めて教育テープも作り指導者の講習をしました。
それが全国の青年組織に広く普及して、86年には「文化キャラバン隊」が構成され、全国各地に文化サークルができたことを知っています。そのとき一緒だったチングたちに、再会の気持ちで自分の姿を見せたいと思っています。
新しい文化創造 在日同胞へ期待
在日同胞はこれまでサムルノリを通して、民族的なものを追求してきましたが、そのような時代は終わったと思います。でも大韓民国という国に文化があり、私たちはその血を受け継いだ子孫です。昔の青年たちが今は指導者となり、その子息たちが青年になりました。そのなかで日本の同胞社会も変わってきたことを私も感じています。
21世紀になり、日本で生きる在日同胞独自の新たな文化のありかたをもう一度、見つめ直すときがきました。同胞と日本文化が合わさった新しい文化を創造してほしい。そのために私ができることがあれば最善を尽くしたいと思っています。
総合芸術の神髄 積極的に海外へ
これから踊り・歌・音楽が1つになった歌舞楽である伝統総合芸術の教育プログラムを創作して日本だけではなく、海外でも積極的に紹介していきたいと思っています。
私が本格的に海外公演に出るようになったのは小学校6年生からです。そのときから日本には何度ともなく来ています。この間に出会った多くの方々と劇場で再びお会いできることを楽しみにしています。
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公演の日程
▽7月1日18時=(盛岡)盛岡市民文化ホール
▽3日19時=(宮城)えずこホール
▽5日19時=(東京)メルパルクホール
▽6日19時=(つくば)ノバホール
▽8日15時=(南砺)福野文化創造センター・ヘリオス
▽10日19時=(名古屋)名古屋市民会館・中ホール
▽14日16時=(枚方)枚方市民会館・大ホール
▽16日15時半=(静岡)静岡文化センター・大ホール
▽19日15時=(北九州)北九州芸術劇場・中劇場。
料金などはプラネットアーツ(℡03・5428・3211)。
(2007.6.6 民団新聞)