掲載日 : [2007-06-27] 照会数 : 5851
語り芸で韓日の理解…パンソリ落語初競演
[ パンソリの南海星さん ]
[ 上方落語の桂小春団治さん ]
桂小春団治さんの想い 両国で正夢に
ともに庶民描く「文化ルーツの源流を見た」
落語家、桂小春団治さん(49)が自ら出演・企画する日韓語り芸「落語とパンソリの夕べ」公演が7月、大阪、東京、韓国の3都市で開かれる。庶民芸能として古くから親しまれてきた韓国のパンソリと日本の落語。形態は異なるが、暮らしのなかの喜怒哀楽を語りという話芸で表現する双方の伝統芸能を両国の人たちに紹介し、相互理解につなげたいと初の試みに挑む。4年前、初めて見た韓国映画「春香伝」で感動して以来、競演への思いをずっと温めてきた。
大学中退後、3代目桂春団治に入門してから今年で30年目。この間、日本だけに留まらず、上方落語を通じて国際交流を図りたいと00年に英国で開催される世界最大の芸術祭「エジンバラ・フェスティバル」に落語家として初めて参加。以後、英・米・仏・韓国・カナダなど10数カ国にわたる海外公演を行ってきた。
国際派の噺家文化交流使も
言葉の通じない海外公演では、背景のスクリーンに字幕を映す。独自に取り入れたこの字幕方式は、現地の人たちと笑いを共有するためには欠かせない。
小春団治さんは昨年、これまでの活動が認められ、文化庁文化交流使に任命され、さらに落語家で初となるNPO法人「国際落語振興会」を設立、理事長として、落語のさらなる発展のために精力的な活動を行っている。
そんな小春団治さんとパンソリとの出会いは4年前にさかのぼる。「映画で『春香伝』を見た時に感動した。パンソリの語りは胸にズキン、ズキンと響いてきた」。「春香伝」は韓国古典の純愛物語で、身分制度を超えた男女の愛の物語として、今でも韓国で人々から愛されている。
パンソリは鼓手の太鼓に合わせて唱者が歌、言葉、身振りを混ぜて物語を歌い上げる口承伝統芸能。そして落語は伝統的な話芸の一種で、限定された小道具を使う以外、衣裳や音曲を極力使わず、身振りと語りで物語を進めていく演芸である。
双方の伝統芸能に共通点を見た小春団治さんは、「日本では今、韓流で韓国の映画やドラマに目が向けられているが、韓国には昔から一般の人たちの生活が語られる『パンソリ』という語り芸があることを日本人に知ってもらいたい。そして韓国の人にも座布団1枚のなかで語る芸があることを知ってもらいたい。庶民の暮らしのなかの語りは人々の心に響く感動があるはず」だと熱を込めて語る。
小春団治さんは03年、韓国の水原華城国際演劇祭に招待され、ハングル字幕で2日間公演をした。「当時、反日感情があると思っていたが、そうではなかった。学校の第2外国語で学ぶ高校生たちが鑑賞してくれ、友好的な交流をした」と当時の思いを話す。同年の大阪での独演会にパンソリの安聖民さんをゲストに迎えるなど、韓日交流も行ってきた。
南海星さんと字幕つき公演
今公演では重要無形文化財第5号パンソリ「水宮歌」保有者候補の南海星さんが、孝行娘を描いた「沈清歌」と、意地悪な兄ノルボと正直者の弟フンボを描いた「興甫歌」を日本語字幕で紹介。小春団治さんが「皿屋敷」、韓国公演では「お玉牛」をハングル字幕で披露する。
「日本文化の源流は韓国にある。文化のルーツが同じだということも知ってもらいたい」と、初のパンソリとの競演に期待をかける。
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大阪・東京と韓国で来月に
▽〈大阪公演〉7月3日19時/大阪府立ワッハ上方ワッハホール
▽〈東京公演〉4日19時/国立演芸場
▽〈韓国公演〉22日19時/韓国国立劇場小劇場(タルオルム)。
料金は大阪・東京とも前売り3500円、当日4000円。問い合わせは国際落語振興会(℡06・4305・3523)。
(2007.6.27 民団新聞)