発足から1年の活動
【京都】行政サービスが行き届かず、孤立しがちな外国人高齢者・障害者への訪問支援活動を展開している「京都外国人高齢者・障がい者生活支援ネットワークモア」(略称、京都モアネット)の発足から1年。この間、相談件数は186件を数えていたことが、同ネットの06年度活動報告で明らかになった。相談件数が多い割にはスタッフ、外国人福祉委員(地域見守り委員)の数が不足しており、さらなるネットワークの拡充が急がれている。
外国人福祉委員不足が響く
昨年4月からの1年間のうち、外国人福祉委員が新たに関わった昨年9月以降の活動ケースを見てみると、在日の認知症高齢者に関する医療・生活・介護相談が最多。続いて言語・異文化によるコミュニケーション問題、および安否確認と情報提供・聴きとりなどによる精神的安定と続く。この3つのケースで全体の7割弱を占めている。
施設で問題行動
94歳の在日1世は認知症が進み、ある施設に入所したが、施設になじめなかったケースだ。他人の部屋に入っては「自分の部屋だ、出て行け」と言い争ったりの問題行動を起こしていた。思いあまった家族からの相談だった。スタッフはみんなで検討した結果、部屋の前に書かれた漢字の名札をハングルで書いてかけ直した。すると、他人の部屋に行かなくなるなど、症状が少し落ち着いたという。
日本語を忘れる
認知症になると、母語しか話せなくなるケースが出てくる。介護にあたっていたある在日2世家族は「方言も入っているので、ちゃんとコミュニケーションがとれない。なにか方法はないか」と思いあまって相談を持ちかけてきた。
「モア」では「在日コリアン高齢者生活支援ネットワーク・ハナ」という全国組織につないだ。同団体作成の『介護韓国語入門』を入手し手渡した。
寂しい独居生活
独居の在日1世(83)はヘルパーの訪問を受けると「寂しい、寂しい、誰でもいいから来てほしい」と泣きつき、帰るに帰れないという。特に土・日や夕方になると孤独感が増すようだという介護事業所からの相談を受けた。「モア」では外国人福祉委員2,3人に声をかけ、交代で入ってもらうようにした。
京都市内は全国的にも独居高齢者の割合が高いとされる。行政側の福祉サービスは申請主義のため、ともすると適時、適切なサービスが行き届かないケースが多くなる。「モア」では定期的な訪問で独居高齢者の生活状態を見守り、行政につないでいる。
問題は訪問・見守り活動に携わるボランティアの外国人福祉委員が34人とまだまだ不足していること。今後の支援の連携体制を構築していくためにはボランティアだけでは限界があり、専属のスタッフの確保が急がれている。
8月に研修会
京都モアネットは8月1・2の両日、京都市との共催で京都外国人福祉委員の養成を図る「高齢・障がい外国籍市民福祉サービス利用サポート事業研修会」を京都市左京市役所で行う。今年で2回目。2日間の研修を終えると、外国人福祉委員として登録できる。年齢・資格などの制限はない。名簿登録の有効期間1年。
問い合わせは京都モアネットまで。
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京都モアネット
京都に在住する外国人高齢者、障害者のための全国初の生活支援ネットワーク。民間の福祉団体と日本人有識者に地元の民団、総連府本部が加わり昨年3月に発足した。京都市からの助成を受けて外国人福祉委員制度を設け、訪問、見守り支援活動を行っている。月〜金曜日、午前10時〜午後4時。住所は京都市南区東九条北河原町5 ℡075・693・2550 FAX075・693・2577 Email:
kyotomorenet@guitar.ocn.ne.jp
(2007.7.4 民団新聞)