掲載日 : [2007-08-29] 照会数 : 6950
盧武鉉大統領の光復節62周年慶祝辞
[ 慶祝辞を述べる盧武鉉大統領 ]
[ 北韓の水害支援物資を積んで出発する韓国のトラック=8月23日 ]
南北関係の実質的な進展を期す
盧武鉉大統領が15日、ソウルで開かれた光復節62周年記念式典で述べた慶祝辞(全文)は次の通り。
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歴代の合意基礎に
双方向協力へ転換の時
尊敬する国民の皆さん。
北の同胞と700万の海外同胞の皆さん。
62年前のきょう、わが民族は日本帝国主義の圧制から解放されました。その日われわれは、胸も張り裂ける喜びで互いに抱き合い、感激の涙を流しました。そして3年後のこの日、国を建設しました。新たな希望をもって、再び出発したのです。そして、私たちが自由と独立を心から謳歌する大韓民国をつくったのです。
祖国独立のためにすべてを捧げた愛国先烈たちに、頭を垂れて敬意を表します。独立有功者と遺家族の皆さんにも深い尊敬と感謝の言葉を申し上げます。
国民の皆さん。
100年前、われわれは自らを守る力がないために、国を奪われてしまいました。艱難辛苦の末に解放を迎えましたが、また再び民族分断と同族相残の悲劇まで味わわなければなりませんでした。
しかし、わが国民は挫折しませんでした。再び立ち上がりました。多くの逆境を克服し、奇跡と神話を創り出しました。
われわれが遂げた民主主義と経済発展は、世界史にも類例がない
半世紀前、100㌦にも満たなかった国民所得は、いまや2万㌦を目前にしています。国民総生産と貿易規模は、世界10位圏に成長し、外貨保有高も世界5位になりました。科学技術も目覚しく発展し、世界4位の特許出願件数を記録しています。
そしてこのような経済発展を土台に、充分な国防力を整えています。現在のわが軍は、世界10大の精鋭強軍として、韓半島の平和を堅固に守り、世界の平和と安定にも大きく寄与しています。
民主主義においても大きな発展を成し遂げました。世界的な人権団体である「フリーダムハウス」は、韓国の政治的な自由を世界最高水準と評価しました。「国境のない記者会」が調査した言論の自由もまた、米国、日本よりも高い順位を獲得しました。
私たちが遂げた民主主義と経済発展は、世界史にその類例を見い出せない成果です。第2次大戦以降、100余の国が独立しましたが、われわれのように先進国に到達した国はありません。
これらすべてが、わが国民の卓越した力量と高い目的意識、そして血と汗の努力の結果です。大韓民国の成功を導いてきた父母の世代に、そして国民の皆さんに、心底から感謝を申し上げます。
国民の皆さん。
今後も私たちは経済を躍動的に発展させながら、すべての国民が人間らしい生活を享受する、名実ともなう先進民主国家に向けて前進するでしょう。
世界唯一の分断国家、必ず解かなければならない宿題
しかし、この過程で必ず解かねばならない一つの大きな宿題があります。現在も私たちは、冷戦のくびきから自由になれないまま、世界唯一の分断国家として残っています。銃声は止んでも、いまだ平和に対する確信を持てないでいます。これ以上遅くなる前に私たちはこのような状況を克服し、民族の新たな未来を開かねばなりません。
現在の私たちを取り巻く東北アジア情勢は、急速に変化しています。中国は驚くほど速い成長を遂げており、ロシアが新たな躍進を見せています。日本は戦後体制から脱し、普通の国家になるべく試みており、米国は世界戦略を再構築しています。冷戦体制は解体されても、いまだに平和と共存の秩序が定着してはいません。いつ再び対決的な雰囲気が醸成されるか分かりません。
参与政府は、変化する東北アジア情勢に対する正確な認識と私たちの歴史に対する痛恨の省察、そして私たちが持っている国家的な力量に対する冷静な評価のうえに、「平和と繁栄の東北アジア時代」を3大国政目標の一つとして提示しました。
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平和と繁栄は韓半島安定で
東北アジアの平和と繁栄という大きな枠組みが成功しなければ韓半島の安定的な平和の実現が難しいとの判断に基づいたものです。そしてその中で、東北アジア時代を主導的に導いて行くことが、私たちの運命を能動的に開拓する道であるとの認識と意思を込めたものです。
参与政府はこのような目標を達成するために、「均衡的実用外交」、「協力的自主国防」、「信頼と包容の対北政策」を3大戦略として推進してきました。
均衡的実用外交=国連事務総長輩出の快挙、6者協議でも積極的な役割
「均衡的実用外交」は、現実的で未来志向的な外交安保戦略です.東北アジアに占めるわれわれの戦略的な位置と重要性に照らして見るとき、そして歴史の経験から見るとき、私たちが均衡を保つことができなければ、韓半島と東北アジアの平和秩序の形成は困難であります。私たちがどのようなビジョンを持って、いかに中心的役割を担っていくのかが大変重要なことです。
このために、私たちは韓米関係を包括的で躍動的な同盟関係に発展させてきました。中国、ロシアなど周辺国との関係もいっそう強化して来ました。
このような努力に後押しされて、昨年にはわが大韓民国が国連事務総長を輩出する快挙を成し遂げました。北核問題を解決する過程では、6者協議当事国間の意見を調整しながら、積極的な役割を果たしてきました。
協力的な自主国防=韓米同盟とともに発展、国防改革など力量強化
「協力的な自主国防」は、世界10位圏の国力を持つ国にふさわしい私たちの国防は、私たち自らが責任を持つという意思と自信感を打ち出したものです。
この間参与政府は、米国に対する心理的依存状態を克服するために努力しながら、自主国防力量をいっそう強化してきました。戦時作戦統制権の転換と駐韓米軍再配置、そして龍山基地移転に合意し、国防改革2020を力強く推進しているのもこのような戦略に基づくものです。
自主国防と韓米同盟はともに発展させなければなりません。決して二者択一の問題ではありません。これからも韓米同盟は、相互尊重と緊密な共助を基礎により堅固に発展していくでしょう。
信頼と包容の対北政策=北核事態の渦中でも、南北関係は粘り強く進展
国民の皆さん。
「信頼と包容の対北政策」もまた、揺るぎなく推進されてきました。忍耐によって敵対的な行為を抑制し、対話と説得で信頼を積み重ねた結果、北核事態の渦中でも南北関係は粘り強く進展してきました。
国民の政府時代と比較しても、南北交易量は2倍、協力事業は4倍、人的往来は9倍に増えました。鉄道連結と開城工団事業は、南北関係の変化を象徴的に見せる事例です。現在約7万人の南北勤労者がともに働く開城工団の1段階入所が完了すれば、10万人の勤労者が年間20億㌦を超える商品を生産することになります。軍事的緊張もよく管理され、参与政府になってからただの一度も武力衝突は起きていません。
韓半島は今、いつよりも安定を維持しています。国家安全度に対する否定的な評価が徐々に解消され、国家信用度が上昇しています。大韓民国の平和指数は米国、フランスより優っているとの国際的な評価もあります。
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交流・協力で北韓にも変化
北韓も変化しており、南北対話・経済協力に実用的で柔軟な態度
北側も変わっています。私たちに対する警戒心が大幅に低下し、南北対話や経済協力により実用的で柔軟な態度を見せています。改革と関連する様々な法令と組織が整備され、市場経済に対する認識も住民たちの間に速やかに拡散しています。
北韓の潜在力と優秀な人力は、多方面の交流協力で確認されています。開城工団で働いている北韓勤労者の生産性向上速度は、驚くほどであります。今後、南北の交流協力が進展するほど北韓の発展速度はより速まるでしょう。
9・19共同声明に続く2・13合意、北韓核施設閉鎖へ初期措置履行
過去の4年間、大きな課題であった北核問題もいまや、解決の途につきました。
2005年には6者協議で北核問題の包括的な解決策を盛り込んだ9・19共同声明が発表されました。9・19共同声明は単に、北核問題の解決方案を示したものではなく、韓半島、さらには東北アジアの平和のための大きな枠組みを提示しています。この実践計画が今年2・13合意として具体化され、北韓核施設閉鎖という初期措置が履行されています。
私は6者協議の当事国が9・19共同声明と2・13合意を誠実に履行していくものと確信しています。
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対外・安保政策さらに前進を
6者協議の進展は南北対話を促進、南北対話は6者協議の成功を促進
尊敬する国民の皆さん。
参与政府が推進した対外政策、安保政策は、大部分が実現段階に入りました。今こそ一歩さらに前進すべきです。
6者協議が新たな段階に入っている現在、6者協議と南北対話が善循環の関係になるよう運営されるべきです。
6者協議の進展は南北対話を促進しています。また、南北対話は6者協議の成功を促進するでしょう。6者協議がより成功裡に進展すれば、その次は韓半島の平和体制を樹立する方向に発展するようになるでしょう。
停戦体制が平和体制に転換され、南北がともに共助する韓半島経済時代が開かれれば、韓半島は名実ともに東北アジア経済の中心になるでしょう。私たちはユーラシア大陸に力強く伸びていきながら、東北アジアの物流・金融・ビジネスのハブとして確固とした位置を占め、北韓は画期的な経済発展の機会を得るでしょう。
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経済共同体も視野
東北アジアの中心国家へ
7年ぶりの南北頂上会談、韓半島の平和と南北共同繁栄を早めるのに寄与
私は2週間後に金正日国防委員長と南北頂上会談を持ちます。7年ぶりに実現する頂上会談は、北核問題で困難がともなった南北関係を正常化する契機になります。何よりも韓半島の平和と安定をより堅固にし、南北共同繁栄を早めるのに寄与するでしょう。進行中の6者協議の進展と、その後の東北アジア多者関係の発展にも助けとなるよう期待します。
南と北はすでに、南北関係の原則と発展方向について、包括的で具体的な合意をしています。72年の7・4共同声明、92年の南北基本合意書と韓半島非核化共同宣言、2000年の6・15共同宣言がそれです。この4大合意は南と北の歴代政府が南北の国民に、そして世界に向かって約束したものです。
今はこれらの合意を実践に移す努力が必要な時です。この間の合意を尊重し、誠実に履行する姿勢を持ってこそ、南北関係は予測可能で信頼し得る関係に発展することができます。新たな宣言より、すでにある合意を守っていくことこそ重要であります。
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未来のための対話こそ重要
無理な欲を抱かず、実質的な進展をもたらす方向で努力
国民の皆さん。
私は今回の会談で、無理な欲を抱くことはしません。何か新たな歴史的転機をつくろうとするよりは、先に述べたように歴史の純理が現実になるよう最善の努力を尽くします。
何よりも相互の理解と信頼を増進することが重要だと思います。このためには、相互理解に努力し、妥協すべきは妥協する姿勢が必要です。論争ではなく、未来のための対話をするつもりです。
経済協力においては、南北経済共同体の建設のための対話に入らなければなりません。今後は南北経協を生産的な投資協力に、双方向協力に発展させ、私たちには投資の機会に、北側には経済回復の機会となるようにしなければなりません。まず可能なものから、一つずつ実質的な進展を遂げる方向で努力する考えです。
6者協議の成功を促進する頂上会談になるようにしたい
会談の全過程で、歴史が私に付加した役割をよく判断して、成果をあげるためにではなく、責任を全うするために努力します。そして、6者協議と調和を図り、6者協議の成功を促進する頂上会談にするつもりです。
国民の皆さんも、心を一つに合わせてくれるようお願いします。「何はだめだ」、「これだけは必ず受け取れ」といった負荷ではなく、大きな枠組みの未来のために創造的な知恵を集めてくださるよう、心からお願いするものです。
南北関係に政派的な利害ない。次期政府も既存の成果の上に進展を
国民の皆さん。
62年前、われわれは分断を自らの力で防ぐことができませんでした。しかし、南北がともに協力し、共同繁栄の途につくことは、私たちの意思にかかっています。私たちの行いによっては、東北アジアの平和と繁栄にも主導的な役割を担うことができます。
そうであれば、私たち内部でも南北問題に対しては誰もが責任ある姿勢で臨まねばなりません。
南北関係の発展においては、政派的な利害がともなうことはありません。ある一つの政府の努力だけで完成できるものでもありません。政府ごとに可能な努力を尽くし、次の政府に委譲して、次の政府は既存成果の土台の上にもう一段高い進展を成し遂げねばなりません。
大統領選挙を前にした政党と政治人たちも、歴代政府の合意を尊重し、自らの合意を覆さない対北政策を述べなければなりません。
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東北アジアの平和発信地に
力と対決の秩序から和解と協力の秩序へ
尊敬する国民の皆さん。歴史は進歩しています。
力と対決の秩序から和解と協力の秩序へと進んでいます。100年前、列強の角逐の場であった韓半島が、東北アジアの平和と繁栄の発信地となる希望溢れる未来が、われわれの目前に近づいています。
私は心さえ決めれば、何事でも成し遂げてきたわが国民の力量を信じます。半万年の歴史を通して数多くの挑戦に勝ち抜いて、輝かしい文化を創造してきたわが民族の底力を信じます。
その力量と底力で新しい歴史をつくっていきましょう。私たちの息子や娘、孫たちに、より平和的で繁栄する未来を譲り渡しましょう。
(2007.8.29 民団新聞)