コラム・特集 内容

 定住外国人の無年金高齢者に対して特別給付金を支給する自治体が全国の5道府県712市区町村に及んでいます。都内でも豊島区が4月から制度化に踏み切ることになりました。豊島区は23区では初めての実現。私たちの生活権拡充運動が着実に広がりつつあることを実感できます。

説得力欠く「財源不足」

 一方、これまで給付実現に向けた議会採択をしていながら、いまだに実現していないという自治体も全国30市・区49町4村にのぼっています。過疎地で、管内に給付すべき対象者が在住していないというならともかく、「財源不足」を理由に予算措置を怠っているとしたら残念でなりません。

 神奈川県では箱根と湯河原の2町が議会で決議を上げていながら、予算化を実現していません。確認の結果、箱根町には1人、湯河原町では10人の対象者が在住しています。湯河原町の担当者によれば、予算化に向けた努力をしたものの、財政部局の理解を得られなかったとのことです。

 保険料を納めなくても日本人であれば公費で支給される無拠出制の老齢福祉年金は現在、月額で3万4333円。これに対して自治体の定住外国人を対象とした特別給付金は鳥取県中山町の3万円が最高です。大多数は多くても1万円前後にすぎず、日本人受給者の半額にも満たないというのが実情です。中にはいまだに数千円どまりという例もありました。ほかの福祉手当と同様、生活保障にはほど遠いというのが現実なのです。

一日も早い施策を期待

 定住外国人の無年金高齢者は86年時の年金制度改革において60歳を超えていた人たちで、現在は76歳以上です。「財源不足」をいうのであれば、各町村の該当者数にあてはめてみてほしいと思います。月額1万円としても支給に要する財源は、多くても数百万円どまりと推算されます。これは財政当局で十分にやりくりできる金額ではないでしょうか。

 しかも、神奈川県や島根県などでは独自の補助システムを設けています。該当の市町村が負担する金額は半分にしか過ぎません。たとえ予算化しても対象者は高齢で自然に減りこそすれ、これからさらに増えることはありません。私たちが「財源不足」を根拠薄弱とするのはここにも理由があります。

 特別給付金は当事者にすれば、わずか1万円であっても、介護保険料の支払いに窮している現状では大きな価値を持ちます。いわば、生活権、生存権に関わる問題なのです。いくら国の制度だからといっても、生活者にいちばん近い行政としてこうした実態を放置していいはずはありません。

 国民年金制度の改善はもとより、それまでの間、自治体には一日も早く国に先駆けた施策展開が実現するよう望みます。

(2003.02.19 民団新聞)

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