掲載日 : [2007-10-11] 照会数 : 6599
<南北首脳会談>大規模で多様な協力事業
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費用は推定10兆ウォン
2000年の第1回首脳会談では開城工団、道路・鉄道連結、金剛山観光の3大経済協力事業に合意したが、今回の会談では経済協力事業の範囲を大幅に拡大した。交渉窓口も次官級の「南北経済協力推進委員会」から副総理級の「南北経済協力共同委員会」に格上げする。
経済特区拡大
遅々として進まなかった開城工団は2段階事業に早期に取りかかることにした。また、開城工団に続き海州と周辺地域を結ぶ「西海平和協力特別地帯」が新たに推進される。海州は開城から北西へ75㌔しか離れていないため、事実上「第2開城工団」になる見込みだ。海州港湾もあり開城工団につながる物流網を補う意味もある。
海州経済特別区は、開城工業団地よりも規模が大きく、開発には10兆ウォン以上の資金が必要と推測されている。これとは別に、土地公社は昨年作成した「北韓開発ロードマップ」で海州港の拡張には3000億ウォン、海州‐開城間を結ぶ高速道路の建設には6000億ウォンが必要と推算している。
なお、海州は、事実上の海上の軍事境界線役を果たしている北方限界線(NLL)の近くにあり、「海州経済特区」付近には北韓海軍施設が密集している。そのため実際に特区建設が始まった場合、軍施設をそのまま維持するか移転するか、北韓側は苦慮するとみられている。
物流網整備
京義線、東海線連結に止まっている道路・鉄道連結事業を開城‐平壌間の道路と、開城‐新義州鉄道補修で拡張する。今回は補修にとどまらず「共同利用」が盛り込まれた。第1回首脳会談後、東海線・京義線道路・鉄道の連結には5700億ウォンがかかっている。
造船協力団地建設
咸鏡南道の安辺と平安南道南浦に造船協力団地を建設することにしたのは南北の利害関係が一致した結果だ。空前の好況を享受する韓国造船業界は人件費と厚板価格上昇のため苦戦している。ただ、造船団地を建設しようとすれば造船所だけではなく、近接道路と発電所も建設または改修・補修しなければならない。南浦港の改修・補修だけでも2613億ウォンが必要となる(土地公社)。その上、新たに造船所を建設するようになれば、さらに数兆ウォンの費用がかさむ。
宣言文に盛り込まれた経済協力事業を実際に行っていくためには、膨大な財源が必要となる。
現代経済研究院は5日に公表した「2007南北首脳宣言の経済的効果」という報告書で、「最大で113億㌦(10兆3587億ウォン)の費用がかかると推定される」と発表した。
権五奎経済副総理は5日の記者会見で、「金正日委員長は、韓国側からの油田・ガス開発投資に相当な関心を示した。首脳会談の合意文には油田開発の部分は含まれていないが、副総理級に格上げされた南北経済協力共同委員会で北側と協議し、議論していくことになるだろう」と明らかにしている。
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対外関係改善では注文…盧大統領
盧武鉉大統領が4日の帰任報告会で明らかにした金正日国防委員長との対話の内容を基に朝鮮日報が再構成した3日の南北首脳会談の対話録中、南北平和および経済協力に関する部分は次のとおり。(かっこ内は状況説明)
盧武鉉大統領=南側での最も大きな関心は韓半島の非核化だ。非核化に関する既存合意を再び確認し、今後も南北間で互いに緊密に協議して協力し、9・19声明や2・13合意を誠実に履行するよう互いに努力していこう。
金正日国防委員長=その点には異議がない。非核化共同宣言を今後守るべき原則として再確認する。今回の(6者)会談の成果について聞いてみよう(北韓6者会談首席代表である金桂寛外務次官を呼んで報告させる)。
盧=(ブッシュ米大統領が最近提案した終戦宣言方案について金委員長に説明)
金=休戦体制を平和体制に転換することに基本的に同意する。終戦宣言の具体的な方式に対してわれわれも関心が高い。これを成就させるために南側が一度努力してほしい。
盧=韓半島での平和定着と経済協力の拡大、東北アジア協力秩序のためには北・米、北・日の関係改善も重要だ。互いに協力すべきだろう。これについても考慮してほしい。
金=…(盧大統領は金委員長が聞いていただけと説明)
盧=西海での平和定着のためには軍事問題ではなく経済問題として解決していくという発想の転換が必要だ。共同漁業水域、海州工業団地開発、漢江河口の共同利用などを一緒に包括的に解決しなければならない。
金=(国防委員会参謀らを呼び、「軍部隊がいるのに可能か。海州カンリョン郡が適切ではないか」と質した後に)原則として受け入れる。
盧=経済協力はお互いに必要なことだ。韓国企業の中には対北投資を希望する企業が多い。経済協力の拡大は南側の大企業も大いに期待している。経済協力は開城などの特区では成功しているが、それ以外の地域ではうまくいっていない。
経済協力の障害要素が多いが、一つひとつ解決していくにはあまりにも時間がかかり手続きも複雑だ。開城のような特区方式で法・制度・インフラを一括して解決するのが最も良い方法だ。合意事項は必ず守り、予測可能性を高めなければならない。当局が合意した事業については、軍事的保障も必ずなされなければならない。北核問題の解決、北・米、北・日関係改善により国際関係も安定的に管理しなければならない。そうしてこそ投資が行われる。
金=…。
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南北首脳会談日誌
【2日】
午前 8時前に盧武鉉大統領は平壌に向け出発。ソウルから約1時間の軍事境界線(MDL休戦ライン)手前で下車し、韓国側のテレビに向けて「禁断の壁を崩すよう努力する」と語った後、権良淑夫人と一緒に境界線を歩いて越えた。開城を経て専用車で陸路を行く。
正午 数万人の平壌市民が歓迎する中、出迎えた最高人民会議の金永南常任委員長とともにオープンカーに乗り、歓迎式典会場の4・25文化会館に到着。金正日国防委員長が出迎えた。宿泊先は百花園招待所。
午後 盧大統領は金永南委員長と万寿台議事堂で会談。
夜 万寿台議事堂で金永南委員長主催の歓迎夕食会。
【3日】
午前 盧大統領と金正日委員長が百花園で約2時間にわたり首脳会談。
午後 2回目の首脳会談。冒頭で金正日委員長が滞在日程を1日延長するよう提案。盧大統領は返答を保留したが、会談の最後に金正日委員長が撤回した。
夜 盧大統領は大同江綾羅島の5・1競技場で行われたマスゲーム「アリラン公演」を金永南委員長と観賞。韓国側主催の答礼夕食会には金永南委員長が出席。
【4日】
午前 盧大統領夫妻は南浦の南北合弁自動車工場、西海閘門を視察。
13時 百花園で盧大統領と金正日委員長が「南北関係の発展と平和繁栄のための宣言」に署名。金正日委員長の招待で送別昼食会。
午後 盧大統領夫妻が平壌中央植物園で金永南委員長と記念植樹。
15時30分 百花園で両首脳が別れのあいさつ。
17時 人民文化宮殿で公式歓送行事。金正日委員長は出席せず。
夕方 盧大統領夫妻が開城工業団地を視察。
20時55分 盧大統領は、韓国側の都羅山南北出入国管理事務所で、テレビを通じて帰国報告。
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主な韓国紙の論評 5日付社説から
国民負担回避を
朝鮮日報 今回の共同宣言は対北支援の約束目録にすぎず、結局、韓国民と次期大統領の負担になるだろう。
宣言文には、北核問題に共同対処しようと謳いながら、「北核廃棄」の文言はなく、「平和体制の構築」という言葉は空しく響くだけだ。
国軍捕虜と拉致者の問題は放置されたままだ。白頭山への直航路、鳳東への鉄道貨物輸送、離散家族の再会問題などはすでに合意しながら、北が履行せずにいるものだ。
11月に開かれる南北総理会談、国防長官会談は、大統領選を目前に控え、与党候補に有利に働くと見られる。国民の負担増大や安保関連について徹底した審議を望む。
北の誠実履行を
東亜日報 今回の宣言は、北核と西海北方限界線(NLL)問題で国民の期待を裏切ったと言えよう。重大な人権問題である拉致者や国軍捕虜については何の進展もなかった。NLLが首都圏の安保と直結することを忘れてはなるまい。
経済協力も一方的だ。宣言のプロジェクトを実現するにはかなりの資本を要し、韓国民の負担を増すばかりだ。
投資を導入するためには、通行・通信・通関の保障が前提となる。この問題が提起されてから10数年にもなるが、宣言で確答はしていない。
南北総理会談など一連の会談が、「選挙」に配慮したものとの指摘がある。実践と信頼が重要で、南北関係の改善にはまず北側の誠実な履行努力が求められよう。
核解決こそ前提
中央日報 宣言文には種々の大規模プロジェクトが提示されたが、問題はどれほど実効性を有しているかだ。
成功のカギは「3つの資本」にかかっている。ひとつは政治的資本。現大統領の任期が数カ月しか残されていない状況で、その確保は難しい。
第2が外交的資本。米国をはじめ国際社会の支援が必要だが、その前提条件が北核の廃棄だ。
第3は経済的資本。宣言では「南北の相互扶助」とあるが言葉だけで、韓国が支援するのは自明だ。不透明な状況の中で、企業の本格的な投資は難しいだろう。
拉致者や国軍捕虜に関する言及がないのも遺憾だ。人権を掲げた大統領が、なぜ自国民の人権には無関心なのか。
実践過程で検証
ソウル新聞 宣言の中でとりわけ、現休戦体制から恒久的平和体制を構築する点が注目される。韓半島の雪解けを早める触媒となるよう期待したい。
海州と周辺地域を含め平和水域にする計画は、北方限界線(NLL)を無力化するのではと懸念する声もあるが、西海漁場を共同で活用すること自体、平和につながる道と考える。
11月に開催される総理会談と国防長官会談は最初の試金石となる。政府は効果的実践ロードマップを作成すべきだ。
近い平和・繁栄
ハンギョレ新聞 宣言は将来の針路のみならず、具体的実践方法まで明示しており、歴史的な文書といえよう。
とりわけ、「西海平和協力特別地帯」の設置計画は注目される。来月に開催される国防長官会談では、共同漁業水域と平和水域を設定するのに必要な軍事保障措置が、優先的に論議されるだろう。
重要なのは、誠実な実践だ。南北双方が統一の展望を持って協力すれば、平和と繁栄は遠くないはずだ。
(2007.10.10 民団新聞)