掲載日 : [2007-11-28] 照会数 : 7667
四天王寺ワッソ「本祭」成功の舞台裏
[ 衣装をチェックする「ポドルフェ」のメンバー ]
364日が準備期間
物品保全に心砕いて
衣装など計8000点
【大阪】華やかな、たった1日の「本祭」の成功の陰には364日間にものぼる地道な準備作業があることをどれだけの人が知っているだろうか。衣装だけで約3600点、このほか、楽器や大小の道具類、そして船だんじりまですべて合わせると総数8000点にのぼる。まつりの運営はデジタル化されているが、これらの管理はすべてアナログともいえる手作業が頼りだ。四天王寺ワッソの舞台裏をのぞいてみた。
「もはや大阪市民の財産」
巡行行列が終わると、まつりに使われたすべての衣装、大道具、小道具、そして船だんじりはいったん大阪府大東市にある倉庫に収納される。
楽器、衣装、大道具、小道具と限られたスタッフで損傷をチェックしていく。今年はプク(太鼓)の一部に皮が破れ、木片が入っているものも見つかった。これらは翌年に備えて専門業者に修理を依頼する。
行列ごとに段ボール箱に収められた衣装は韓国伝統舞踊に携わる専門家が厳しい目でチェックしていく。常時使用される1000着をクリーニングに出す。毎年100着程度に損傷が出る。下着や靴下など汚れのひどいものは破棄するものもある。クリーニングが終わって衣装が戻るのは12月。すべてのチエックが終わるとすでに年を越しているのが普通だ。
この作業を手伝う韓国伝統舞踊グループ「ポドルフェ」で活動する女性たちは、「1枚1枚点検していく作業は大変ですが、参加者たちが『わあ、きれい』といって楽しく巡行に参加している姿を見ると安堵します」と話している。
特に梅雨時の大敵はかびの発生だ。また、太鼓などは湿気で皮が破れやすくなる。一年中気が休まることはない。スタッフで管理責任者の野口登さんによれば「保管箱はプラスチックでは湿気を吸わない。その点、紙の箱は湿気を調整してくれる利点がある」という。
李秀明事務局次長は、「年に1回開催される四天王寺ワッソは、年中物品を管理し続ける頂点の上に成り立っている。開催日を1本の花と例えると、土の下に隠れた364本の根がある。四天王寺ワッソは、先達が残してくれた財産。これを次世代と日本人がともに手を取り合い、大阪市民の財産としてあり続けさせるためにその管理に取り組んでいる」と語った。
四天王寺ワッソは在日韓国人系信用組合の関西興銀の発案で、在日経済人の協力を得て90年から始まった。四天王寺を会場に巡行数3600人、沿道の観客は43万人に達した。現在の巡行者1000人、観客5万2000人と比べれば昔日の感は否めない。
しかし、資金も人材も出して支えてきた関西興銀は00年に破綻する。01、02年と中止に追い込まれながら、大阪の文化的財産として復活できたのは、再開を待望する市民の力と一貫した理念の存在だった。有志がNPO法人大阪ワッソ交流協会を立ち上げ、個人会員を募り支持基盤を構築。資金面では在日経済人、関西財界、韓国企業および大阪府・大阪市の協力で03年から復活にこぎつけた。
事業規模はかつてと比べてコンパクトになったが、当初掲げた①在日韓国人と日本人の共生・融合②在日次世代のアイデンティティーの確認と正しい歴史認識③韓日交流の架け橋‐という理念は維持してきた。来年も3月になると次のまつりに向け準備が始まる。在日韓国人が始めたまつりは、その魂を内包して大阪市民のまつりとして確実に継承されている。
(2007.11.28 民団新聞)