掲載日 : [2007-12-05] 照会数 : 7596
<社説>「参政権」天王山は通常国会
機運煮詰め決断促そう
早ければ来年春にも想定される総選挙をにらみながら、緊迫と混迷の度を深める日本国会の現状からは、私たちが早期成立を求める永住外国人への地方参政権付与法案も、重石をつけられたまま浮上する機会に恵まれないかのように見える。
しかし、付与法案の早期成立へ機は熟しており、一挙に加速する可能性がいつにも増してある、との私たちの認識にぶれはない。7年前には公聴会を開くまでになった火種は、いったんは消し炭のようになりかけたが、私たちや熱心な議員たちはその炎を絶やさないよう、持続的に努力を重ねてきた。そして今、種火が徐々に火勢を強めようとしている。
相次ぐ積極発言
公明党の北側一雄幹事長は先月21日、国会内での記者会見で付与法案に言及し、①8年前の連立政権合意に盛られ、国会にも提出されている②韓国ではすでに、日本人を含む永住外国人に地方選挙権が付与されている③付与しても違憲でないとの最高裁判決がある−−ことなどを改めて指摘、「放置しておくと日韓関係にヒビが入る一つの要因になるのではないかという危惧もある。法案が国会にかかっているので、ぜひ、前に進めてほしい」と強調した。
北側幹事長はこの日の与党幹部会でも同様の見解を表明し、付与実現へ動き出すべきだと尻を叩いた。最大野党で参議院第一党の民主党でも、積極的な発言が続いている。同党の簗瀬進参院国会対策委員長は先月17日、栃木韓国商工会議所での講演で、「在日外国人の人権確立と日本の国際的な信頼のためにも、次の通常国会で議員立法として法案提出に全力を尽くし、大きな流れをつくりたい」と表明した。
地方参政権付与に反対する国会議員はいても、党論として反対を公にする政党はない。曖昧な消極姿勢を見せてきた自民党でさえ、多くの推進議員を抱えている。それらは「永住外国人に地方参政権を! 11・7全国決起大会」に自民党を含む各政党代表が参加し、果敢な激励辞を述べたことでも改めて証明された。
それをその場限りの発言に終わらせず、有力政党幹部のその後の相次ぐ積極発言につながったのは、5000人の「これ以上の先送りは許せない」とする真剣さと熱気に溢れた決起大会を目の当たりにし、いつまでも店ざらしはできないとの思いを新たにしたからだ。私たちの熱誠が推進政党・議員の奮起を促し、再浮上への空気を注入したのは間違いない。
民団は11・7全国決起以降も気を緩めることなく、来年の通常国会を天王山と見て後続活動の準備を着々と整えてきた。各政党・国会議員への直接的な働きかけを強めるのはもちろん、全国各地で地方議員や市民団体などを網羅したシンポジウムなどを積み上げて機運を醸成し、国会中枢に政治決断を促す方針だ。
参政権運動が本格化して14年、最高裁が付与を違憲ではないとした判決から12年、法案が初めて上程されてから7年になる。この間、論議は出尽くし、「国民固有の権利」一本槍の反対論は根拠を失ってきた。むしろ、地域社会の重要な活動主体である永住外国人に参政権を付与することは、地方自治の活性化・充実化につながり、日本の発展と国際化に不可欠とする現実的な認識が深まった。
一致結束し邁進
だが、付与への動きが本格化すれば逆風も強まる。推進派各議員へ直接的に威圧が加えられる可能性も排除できない。永住外国人に対する罵詈雑言も飛び交うはずだ。反対勢力は少数派で正論を持たないがために、過激な手法をとりがちでもあることを念頭におきたい。
地方参政権問題の現在地を運動論の観点から規定すれば、ようやく熟成した付与への機運を守るために、反対派からの風圧・威圧を封殺もしくは極小化すべき段階にある。しかし私たちは、圧力には圧力、威圧には威圧をもって対抗する立場にはない。あくまで推進勢力を勇気づけ、反対勢力を萎縮させる世論の喚起に向け、一致結束しての邁進あるのみである。
(2007.12.5 民団新聞)