掲載日 : [2007-12-21] 照会数 : 6069
<女性コラム>やはりオンマの味よ
先月、あるガイドブックが発売された。東京のおしゃれなレストランや料亭が、星の数と共に紹介されているらしいその本は、発売と同時に飛ぶように売れ、どこの書店でも入手困難だそうだ。
年の瀬にそんなニュースをぼんやりテレビで見ていたら、なぜだか少し乾いた気持ちになった。
在日3世としての自覚や意識がまるで欠落している浮かれポンチな私でも、暮らしの中で唯一絶対的な「韓国」を感じるところがある。胃袋だ。
わが家は母親がずっと専業主婦だったこともあり、毎食あたたかい料理が食卓に並び、そのありがたい光景は今日現在まで続いているのだが、その中心には必ず「メイド・イン・オンマ」のキムチがある。
市販のそれと比べると相当パンクな味だけど、どんなおかずの日であれ、その鮮やかな唐辛子の赤は当たり前のように食卓を彩ってきた。
たまにそこに祖母が漬けたキムチが混ざると、食べた瞬間すぐにわかる。洗脳に近いほどその味を胃袋が記憶し、愛している。
どうしようもなく貧乏くさいけれど、そういう理屈じゃない母親の味はどこの国のどんな民族にも存在して、それは例の星付き高級レストランの料理より、実は上品で人の気持ちをまるくする存在なんじゃないかと、時々思う。
配役としてはそろそろ「オンマ」側に回らなきゃいけない年齢になってきた28歳(独身)の冬に、そんなセンチメンタルで呑気にしんみりしている場合でもないけれど、そう思う。
権佳恵(東京・会社員)
(2007.12.20 民団新聞)