掲載日 : [2007-12-21] 照会数 : 6770
<寄稿>江原道と鳥取県の交流再開
国の対立持ち込まず
民団鳥取本部団長 薛幸夫
江原道と鳥取県が江原道庁で10日、2年8カ月の中断を乗り越えて地域間交流のいっそうの発展を期すことを誓い合った。ここに大きな役割を果たしたのが、平井伸治知事一行と道庁に金振兟知事を訪れ、会談にも同席した民団鳥取本部の薛幸夫団長だ。交流再開へ根回し役を担い、まさしく韓日の架け橋となった薛団長に、寄稿してもらった。
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05年2月22日、隣の島根県が「竹島の日」を制定して間もなく、江原道が鳥取県の対応を打診してきた。これに片山前知事が「竹島は韓国の領土ではない」などと発言、江原道の道民やマスコミが沸き立ち、交流中断となった。事態を打開するため、道庁を4回訪問した私にとって、行政間交流の再開は、「やっと!」の思いだった。
何が重要なのかは自明だ。地域間の韓日交流、国際交流の持つ本義である。その理念はひと言、東北アジア・環東海(日本海)の平和と安定である。民間交流に代表される地域間交流は、生身の顔と顔、肌と肌の付き合いだ。友人となった者同士がどうして、武器を持って争うことがあろう。
国家外交の拙劣な表出が戦争であるならば、その国家を超えるものを地域間交流は持っている。島根県の「竹島の日」や片山発言は、地域間交流に国家の専決事項(領土問題)を持ち込んだことにある。そのことを私は道・県、双方住民、マスコミなどに口をすっぱくして訴えてきた。
両知事は会談に臨んで、お互いの労をねぎらうとともに、平井知事は双方の関係者やマスコミが見守るなか、「これからは不用意に、国家間の問題は発言しない。相互理解を深めよう」と言明した。金知事はこれを「雨降って地固まる」と受け、さらに「このたびの交流再開は平井知事や県民の熱意と、そのきっかけとなった我が薛団長の役割が大きい」と言及してくれた。
会談後、金知事と話す機会があり、私は英邁な判断とその行動を表す「英断」ではなく、勇気ある決断を意味する「勇断」に感謝すると申し述べた。江原道ではいまだに、鳥取県との交流再開に反対する意見があるのを知っているからだ。
道庁のある春川市はこの日、零下だったにもかかわらず、前日、江原道の友人たちと祝杯を重ねた体に心地よかった。仲人の仕事は終わった。
(2007.12.20 民団新聞)