掲載日 : [2007-12-21] 照会数 : 7623
<Life>めげずに生きる 独居病身
[ パソコンの操作もお手のもの ]
[ いつも明るく笑声をたやさずに ]
さまざまな理由からひとり暮らしを続ける同胞たちがいる。姜順礼さん(87、東京・豊島区)と、柳末子さん(57、神奈川・小田原市)はともにクリスチャンだ。自分の置かれた境遇を受け入れながら、自分らしく生きる。
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不随も「神の試練」
得意は発明 あくなき探求心
姜順礼さんは数年前に最愛の妻を亡くし、天涯孤独になった。「病気の問屋だよ」と語る姜さんはこれまで、心筋梗塞などで数回の手術を経験。糖尿病のほか、放射線治療で完治したものの膀胱ガンにもなり、脳梗塞では半身の自由が思うようにきかなくなった。
要介護1で週に数回、家事援助の訪問介護サービスを利用。年金はなく生活保護で暮らす。ボタンを押せば救急車が駆けつける24時間の緊急連絡サービスが頼りだ。
姜さんは23歳の時に渡日。東京の大塚で皮工芸品・アクセサリー製造を営む会社を設立、順調な滑り出しを切った。
子どもはいないため60代の時、跡継ぎにしたいと韓国に住む実姉の息子を養子に迎えた。多くは語らないが、姜さんの期待は裏切られた形となり、息子は帰国後、音信不通に。会社もたたまざるを得ない状況に追い込まれた。
姜さんは、得意の皮を用いて作った折りたたみ式小銭入れ「エスカルゴ」で特許を取得したほどの発明家だ。今、熱中しているのはメタボリックシンドロームでも安心して食べられるケーキ菓子作り。人々の健康のために広めたいと、時間があれば研究を重ねている。
世の灯台にと夢を持ち続け
またパソコン操作も手慣れたもので、探求心は留まることを知らないようだ。クリスチャンになって30年。今でも「価値ある一生であるように」と祈る。
「まだ生きようという意欲があります。人間が馬鹿だから悲しいこと、辛いことは覚えていません。全ては神が与えてくれた試練」
与えられた生命を一生懸命に生き、世の中の灯台になりたいと笑顔で語る。
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こもらず人と接し
透析30年でも「悩みません」
「来年1月11日でまる30年になります」。腎不全のため27歳から透析治療を受けている柳末子さん。受け始めた当時は何年生きられるか分からないという時代だった。週3回、1回の治療に4時間を要する。
腎臓が悪くなったのは23歳から。それでも35歳まで事務の仕事を続けた。最初は貧血がひどく駅の階段も上れないほどで、免許を取得して車で通勤した。27歳からクリスチャンになった教会での活動が増えたことから退職した。
同居していた姉(二女)が3年前に死去。以来、一人で暮らす。近くには兄が暮らし、川崎市にいる姉(長女)も泊まりにくるから心強い。
腎不全であることを医師から告げられた時は「ショックでした。1日24時間、病気のことが頭から離れなかった。でもクリスチャンになった途端、病気のことは頭から消えました。あれは不思議です。食事も美味しくなりました」。3年前から車イスの生活を送る。この間に数回、股関節の手術をした。だが、長期透析の合併症で骨がもろくなり、再手術を受けられなくなっていた。
さらに透析治療では合併症や拘束時間以外に水分、塩分、タンパク質などの食事制限が厳しい。「透析でカロリーを消耗するために私は1日、2000㌔カロリー弱を摂取しないといけません」
明るく暮らし絶やさぬ笑顔
週3回、掃除や調理などの家事援助でホームヘルパーが来訪する。主日(日曜)礼拝や病院の通院などで、毎日のように多くの人たちと接する。知人などから「明るい人」だとよく言われるという。取材中も笑い声が絶えなかった。
「あまり悩まないというか、悩みません」
以前、韓国の教会と相互訪問したことがある。「また私たちの教会で、話ができたらいいな」と楽しみにしている。
(2007.12.20 民団新聞)