危機感をバネに奮起
躍進へ足掛かり築く
啓発・激励し合い創意工夫も
61年の歴史をもつ民団にあって、今年はどう位置づけられるのか。
民団にも当然、その齢の分だけさまざまに評価される1年があった。躍進への画期を記した年、あるいは混乱を重ねて力量を後退させた年、さらには存続自体が脅かされた危機の年。誇るべき大事業を準備、もしくは成就させた年、あるいは無為無策のまま流された年。
団員が底力発揮ジリ貧に歯止め
昨年9月の第50回臨時中央大会で現執行部を誕生させた民団にとって、民団史上にも例のない危機(5・17事態)後のこの1年は、ジリ貧に甘んじるのか、それとも踏みとどまって反転躍進への足がかりを築くのか、剣が峰にあったといって過言ではない。
結論から言って今年は、危機の後遺症を終息もしくは抑制しつつ、団員の底力を引き出してジリ貧に歯止めをかけ、再びの躍進へ反転する士気を養った1年であった。全国の幹部・団員が民団の置かれた状況をよく理解し、奮起した証と言えるだろう。
民団の時代的特徴をざっと振り返ると。草創期から50・60年代は、内部抗争や朝連(在日朝鮮人連盟)・朝総連の圧迫・撹乱による混乱と激動の時代だ。70年代中盤から躍進期に入り、80年代には行政差別撤廃運動などを中心に数々の大きな実績をあげた。90年代は安定期であると同時に、同胞社会の質量の変化が顕在化し、組織基盤の弱体化に直面し始めた時期だったとも言える。
2000年代に入ると、本国政府との伝統的な協調関係にかげりが生じ、それは5・17事態克服以降、組織弱体化に拍車をかけかねない状態にまで至った。その端的な表れが昨年8月末、つまり臨時中央大会の開催が決まった時点で行われた、政府補助金の使用実態に対する指導監査であった。
民団はその結果を謙虚に受け入れながらも、補助金の使途・運用についての不本意かつ過酷な指摘については、民団の実情を勘案しつつ、段階的に調整する方向で心血を注いできた。しかし、現在もなお明るい展望を得るには至っていない。
困難を恐れずに組織再生に邁進
民団は5・17事態によって内外の信頼を失い、なおかつ補助金問題で追い討ちを受ける、まさに内憂外患の状況下にあった。
鄭進中央本部団長は、初めての通年事業に臨んでの07年新年辞で、人的物的資源の漸減傾向と60年の星霜がもたらした制度疲労に言及し、その反映として多くの団員が先行き不透明感に包まれていることを指摘した。
組織基盤の弱体化と士気の低下を率直に認め、民団の使命を再確認し力強く歩みだす契機となるはずだった創団60周年もまた、不発に終わったことを踏まえた上で、むしろその悔いを糧に心機一転し、困難を恐れず組織再生へ邁進しなければならないと強調した。
具体的には、同胞生活に密着した主要事業を効率的に推進する一方、第一には中央と地方、幹部と団員との意思疎通を充実化して問題意識の共有を促し、第二に幹部の育成と能力向上を図り、第三に中央財政の合理化と地方の財政自立の速度を速める、の3点を提示した。
この指針の貫徹度は高いレベルに達したと見てよい。第一と第二のテーマについては、民団自体の全国幹部研修と団員全世帯戸別訪問事業をワンセットにした集中活動、婦人会の全国7ブロックでの大研修会、中央本部結成30周年キャンペーンの一環として展開された青年会の1000戸訪問全国キャラバンが同時進行されたこともあって、効果的なシナジーを生み出した。
青年会が9月にソウルを中心に開催した「07在日同胞青年ジャンボリー」が、当初目標の500人を大幅に上回る600人を集めたのも、「永住外国人に地方参政権を! 11・7全国決起大会」に5000人が熱い思いで結集したのも、民団と傘下団体が一体になって盛り上げた研修・戸別訪問を抜きには語れない。
第三の財政問題では中央がまず節減・合理化に努める一方、中央常任部署として4月に事業局を新設、5月には民団・韓商連・韓信協の三者が財政基盤造成委員会を立ち上げ、12月には収益事業体を発足させた。地方本部の財政自立を優先的にサポートするこの事業は、今後に期待をかけ得る態勢を着々と整えたと言える。
生活者に即した新規事業の展開
新規事業も相次いだ。同胞生活に密着した分野では、永住資格をもつ在日韓国人を再入国許可制度の適用から免除する運動を展開、さらには鄭団長の公約でもある「みんだん生活相談センター」を7月に開設・稼動させた。在日社会を豊かにする文化の担い手を発掘しようと新設された「MINDAN文化賞」に多くの応募があったことも特筆すべきだろう。
大手を中心に結成60周年事業を行った地方本部も多く、「10月マダン」も大阪が3000人を集めたのをはじめ、例年以上に力が入った。ゆかりの地で行われた朝鮮通信使400周年記念事業にも、各地民団は全的に協力した。青年会中央30周年を記念して、「青年会OB全国連絡会」が2月に産声を上げ、現役世代に物心両面で支援するなど、民団にとって新たな力となる注目すべき動きもあった。
この1年は全国の幹部・団員や傘下団体が危機意識をバネに、お互いに啓発・激励し合い、創意工夫を惜しまなかった1年だったとも言える。それら大小の力が相互に作用し、民団力のボトムアップに確実につながった。
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民団中央や傘下団体代表で構成された本国礼訪団が、青瓦台に盧武鉉大統領を訪れ、民団の当面課題や本国との紐帯強化問題などについて意見交換した=7月23日
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民団中央および傘下団体の役職員35人が、第一特戦旅団司令部などで兵営体験研修を行った=8月16〜18日
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地方参政権獲得へ決起大会に5千人
「永住外国人に地方参政権を!11・7全国決起大会」に5000人が結集、各政党の代表と早期実現へのエールを交換した=11月7日、日比谷野外音楽堂
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東京、大阪、京都、兵庫など大手を中心に、各地方本部の創立60周年が相次いだ。大阪民団の記念マダンには3000人も参加した=11月18日
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忠清南道の公州で開催されたサムルノリ世界競技大会で、建国チームが創作部門で在日初の大統領賞(1位)を受賞した=11月11日
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同胞生活支援事業の一環として、身近な悩み事や相談事に対応すべく、「みんだん生活相談センター」が韓国中央会館内にオープンした。弁護士ら25人の相談員でスタート=7月17日
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同胞歴史資料館が全面リニューアル
在日韓人歴史資料館が全面リニューアルオープンした。展示資料は2年前のオープン時の2倍になった=6月
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民団・韓商連・韓信協が一体となり、財政基盤造成委員会を構成した=5月29日
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7月の新潟中越沖地震、9月の韓国南部豪雨、北韓水害と大きな被害が相次ぎ、民団は義援活動を行った。鄭進中央団長は民主平和統一諮問会議を通じて北韓水害義援金を伝達した=10月1日
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オリニサマーキャンプが各地で活発に開催された。60周年記念事業の一環に位置づけた民団東京では、過去最高の200人を集めた
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同胞青年のさらなる結集を期して、青年会中央本部は中央会館で「青年会キャラバン全国一周」の出発式を持った=5月11日。80日間で1000戸を訪問
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日本人を救出しようとして亡くなった留学生李秀賢さんを題材にした韓日合作映画「あなたを忘れない」が全国上映。7周忌に合わせた特別試写会で、天皇ご夫妻が秀賢さんのご両親に温かい言葉をかけた=1月26日
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第17代駐日大使として赴任した柳明桓氏(前外交通商部第一次官)を歓迎するレセプションが、民団主催で都内のホテルで開かれた。柳大使は「民団と心をひとつにして、民団がさらに発展するよう努力する」と強調した=4月20日
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新校舎に移転の金剛学園
大阪の金剛学園の新校舎が、大阪市南港コスモススクエアに完成、2学期から授業を開始した=9月1日
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結成30周年記念で青年ジャンボリー
在日韓国青年会中央本部の結成30周年を記念した「同胞青年ジャンボリー」が、ソウルなどで開かれた。日本各地から600人が結集し、未来創造への連帯を培った=9月14〜17日
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婦人会の全国研修会が今年も7ブロックで開催され、地方参政権獲得へ意気込みを新たにした=6〜7月
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四天王寺ワッソが復活5年目。華麗な時代絵巻は大阪府民の財産として定着=11月3日
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朝鮮通信使400周年友情ウオークで親善
朝鮮通信使400周年になる今年、各地で記念イベントが相次いだ。なかでも、「21世紀の朝鮮通信使友情ウオーク」は、在日・日本・韓国の有志がソウルから東京までの1130㌔を46日間で踏破し、韓日両国の友好親善ムードを盛り上げた。沿道各地の民団では全面的にバックアップした=5月16日に皇居にゴール
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民団は6月から11月まで、団員全世帯戸別訪問と全国幹部研修をワンセットにした集中活動を推進した。東京本部では全国の先陣を切って出発式を行った=5月28日
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青年会中央結成30周年を期して、全国の関係者有志が東京で「青年会OB全国連絡会」を発足させた=2月23日
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在日韓国商工会議所が都内で創立45周年式典・祝賀会を行った。韓日各界の来賓ら約740人が出席=4月16日
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民団の公式モバイルサイト(mindan‐m)がオープンした。PC版公式サイトと同様、民団新聞の記事や各地民団の連絡先などが閲覧できる=6月
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全国の青年会メンバーが、京都の琴引浜で漂着ゴミを集め、環境保全運動に一役=6月2・3日
(2007.12.20 民団新聞)