掲載日 : [2008-01-16] 照会数 : 5710
イルボンで出会いのエッセイ<5> 金益見
ご先祖様「今年もよろしく」
私は、年末のカウントダウンに参加したり、友だちと初日の出を見に行ったり、そういう若者の年越しらしいことをしたことがない。
なぜなら、元旦は、ミョンジョルがあるからだ。前日の31日は、その準備に大忙しで、遊んでる場合ではないのである。私はそれがずっと嫌だった。友だちが楽しそうに年越しの計画を立てている時に、何で私だけ家のお手伝いをしなくちゃいけないの! と思っていた。
年明けにバイトに行くと、「金さん、年越しと元旦はミョンジョルの準備で全然遊ばれへんかったやろ」とバイト先の先輩に言われた。その先輩は日本人なので、「なんでそんなこと知ってるんですか?」と尋ねると、「昔付き合ってた彼女が在日の子で、年越しと元旦は絶対遊ばれへんって言われとったから」と笑った。
私はすかさず「嫌じゃなかったですか? 彼女とカウントダウンに行ったりしたくなかったですか?」と聞いた。すると先輩は「いや、逆にうらやましいと思ってたよ。大人になったら、家族と正月を過ごすことなんてないもん」と笑って言った。
私のバイト先には在日コリアンが3人働いているが、元旦は私を含め、全員が休みだったという。日ごろ、家族サービスをないがしろにしている(らしい)副店長も、元旦だけは休ませてくれ、実家帰らなあかんから! と休みを取っていたらしい。
私は、それを聞いて〞いいな〟と思った。今まで自分のことだからわからなかったけれど、お正月に家族や親戚で集まってひとつのことをやるというのは、とても大切なことのような気がしたのだ。
帰ってからこの話をすると、母は「あなたその年になって気づいたのー?」と笑いながらこう言った。
「ミョンジョルはね、新しく年が始まる日に、ご先祖様にあいさつをするためにやっているのよ。お正月に今年もよろしくお願いしますって、色んな人にあいさつするでしょ? それと一緒なの。お正月だからこそご先祖様を家に招待するという気持ちで家族全員で準備するのよ」
ご先祖様! 来年はもっと気持ちを込めてお迎えしますので、心置きなく我が家に遊びに来てください!
(2008.1.16 民団新聞)