掲載日 : [2008-01-30] 照会数 : 8874
フラッシュ同胞企業人(18) 高品質の鉄に加工
[ 1950年東京生まれ。姫路南高校卒。80年にマキウラ鋼業(本社・姫路市飾磨区)社長就任。兵庫韓商副会長。2男2女孫1人。 ]
産業廃棄物をリサイクル
マキウラ鋼業の宋玉植社長
資源の有効利用
「産業のコメ」と称される鉄は、いつの時代も経済成長の牽引役だ。近年は、資源の有効利用や地球環境の保護の観点から、金属のリサイクル事業が重要視されている。その産業廃棄物の収集運搬や中間処理、製鋼原料の加工販売などを手がけている。
「メインはスクラップの処理加工、圧縮切断加工、破砕業。破砕機の対象となるのは廃車が多く、ボディだけになったのを破砕し、自動的に鉄と非鉄金属、ダストに分別する」
日本の自動車保有台数は7828万台(06年現在)。このうち400万台を超す車が1年間に廃棄されているが、不法投棄されるものも少なくない。
「騒音や振動、粉塵などに関する環境問題に一番神経を使う。そのために取得した許・認可は数多い」
本社工場の奥には、2年前にドイツから導入した、高さ16㍍の選別機が設置され、西日本全域から集めた廃車を、月間2万台処理する。加工処理したものの品質には定評がある。
「シュレッダーにより分別される比率は、鉄68%、非鉄2%、ダスト30%。非鉄金属はさらにアルミニウムや真鍮(しんちゅう)、ステンレスなどに選別される。ダストは減容固化処理し、4分の1ほどのかさに縮める」。このように環境処理や粉塵防止に万全を期している。
03年にISO14001認証を取得したことで、「顧客への信頼感が増したのはもちろん、社員たちの責任感も強くなった」。社員は約70人、06年度売上額は78億円。
1952年に父親の相玉氏が薪浦商店を創業、スクラップ業(寄せ屋)を始めた。55年と60年にプレス工場を新設し、日伸製鋼(現在のJFE条鋼)や大和工業の直接問屋となる。
高校卒業後の69年から現場に出た。「スクラップを引き取りに行き、トラックに積んで施工所に納める作業だが、夏場は大変。スコップ作業を長くやると、腰が痛くなった」
72年に(株)マキウラ鋼業に社名変更し、法人化。80年に社長就任後、廃車を破砕するシュレッダーを導入し、産業廃棄物の処理業を本格化していく。現在、設置された機械設備はほとんどがドイツ製で、取り扱う産業廃棄物は、車のほかに自販機や農機具、パチンコ機など。
アジアとの共存
バブルがはじけて、91年から10年間、日本経済が低迷した。「当時はとても苦しかった。社員が3分の1にまで減り、売上額も激減した」。ところが、6年前の春ごろから韓国や中国、台湾からスクラップの注文が来るようになり、鉄の値段が上昇した。「ポスコなど韓国の製鉄企業が世界的に成長したので、励みになる。これからはアジアとの共存共栄が大切」と強調する。
「世界のどこでも通用するためには、品質向上が不可欠。そのための人材育成が必要だ」。工場が手狭なので長期計画として海外進出も検討中だ。
会社の応接間には、スクラップで作った人形が飾られている。「鉄とは運命共同体だ」。根っからの鉄好きである。
(2008.1.30 民団新聞)