掲載日 : [2008-02-06] 照会数 : 5827
イルボンで出会いのエッセイ<6> 金益見
想いは伝わる 心に蒔いた種
まきずし大作戦という活動の講演会をやっている。
私がその活動を通して伝えたいことは、在日の歴史や、在日がかかえるさまざまな問題ではない。みんな違って、みんないいということだ。
例えば、日本には巻き寿司という食べ物があるが、韓国にはキムパブがある。どっちも見た目は似ているが作り方も味も少しずつ違う。そして、どちらもそれぞれおいしい。
もちろん、歴史を学んだり、問題提起を繰り返し、考えていくことはとても大切だ。しかし、平和な日本の中で今を楽しんでいる若い人たちに、そういったことを訴えかけても、今いちピンとこない人が多いのではないだろうか。
その先にあるさまざまな問題を考える前に、まず興味を持ってもらうこと、偏見をなくすこと、友だちになりたいなと思ってもらうこと…。そこから始まるんじゃないかと、私は思っている。
しかし、口で偉そうなことを言っても、私は今までの講演会で、自分の思っていることをうまく伝えられた試しがなかった。講演後は、後悔と反省ばかりで、人の心のドアをノックするどころか、ノックする手が震えるという、全く話にならない状態だった。
最初のころの講演を聞いた人の感想は「まきずしまきずし言うから、巻き寿司食べたくなってきたわ」や、いいものでも「話は下手だと思いましたが、一所懸命さは何となく伝わりました」だった。
しかし、昨日、やっと思うような講演ができて、すごく嬉しい言葉をたくさんいただいた!
〞言い過ぎかと思われてしまうかもしれないですが、私が16年間生きてきたなかでも一番といっていいほど、素晴らしい方だなと思いました! 今日のお話を聴いて在日の方の印象が変わりました。もちろん、良い方にですよ。〟〞自分は絵本かくひとになりたいんです! だから将来ぜったい絵本かくひとになって、普通に在日の子も登場人物におるようなそんな本かきます!〟
嬉しくて、涙が出た。想いは伝わる。そして、その人の中で育っていく。出会って伝えることは、その人の心に種を蒔くことなんだなと気づいた。
たくさんの人の心に蒔いた種が、きれいな花を咲かせますように!
(2008.2.6 民団新聞)