掲載日 : [2008-02-06] 照会数 : 6486
<寄稿>似て非なるもの 住民基本台帳法
佐藤信行(在日韓国人問題研究所)
在日外国人にも適用
日本に入国滞在する外国人に関する情報を日本の住民基本台帳と同様の世帯単位の台帳制度に再編し、現行の外国人登録法は撤廃すると鳩山邦夫法相が1月25日、明らかにした。これは在留外国人の情報を国が一元管理するのが目的だ。中長期の滞在者は入国管理局から発行される「在留カード」を各自治体に示して新たな台帳に登録することにより、行政サービスが受けやすくなるとされる。在日韓国・朝鮮人については台帳に登録する一方、在留カードは不要とするようだ。法務、総務両省が新制度の骨子案を作り、来年の通常国会に提出する見通し。新制度について在日韓国人問題研究所の佐藤信行所長が寄稿した。
外登法09年改定
『毎日新聞』1月25日付は、「外国人登録法の在留管理制度を撤廃、カード台帳に再編」と報じた。この改定は、内閣府のもとの規制改革会議が昨年12月25日にまとめた第2次答申に基づくもので、そこでは「現行の外国人登録制度を、国及び地方公共団体の財政負担を軽減しつつ、市町村が外国人についても住民として正確な情報を保有して……[日本国民を対象とする]住民基本台帳制度も参考とし、適法な在留外国人の台帳制度へと改編する」とし、総務省と法務省は今年3月までにその基本構想を作成・公表すべきだ、としている。
しかし、この答申の文面、あるいは『毎日新聞』の報道内容は、これまで日本政府が進めてきた検討・策定作業のごく一部である。たとえば自民党政務調査会「新たな入国管理施策への提言」(05年6月)、外国人の在留管理プロジェクトチーム「検討状況報告」(06年6月)、犯罪対策閣僚会議作業部会「報告」(06年12月)などで繰り返し言及されているのは、(1)外国人登録情報を法務省入国管理局が一元管理すること、(2)入管局が氏名・国籍・在留資格・在留期間・勤務先など登録事項を電子データとしてICに登録する「在留カード」を発行することである。
現在の外登法が日本国民の住民基本台帳制度と異なる点は、(1)顔写真の他、勤務先など数多くの登録事項を設けていること、(2)登録証の常時携帯と定期的な確認登録を義務づけていること、(3)しかもこれらの義務規定を刑事罰によって強制していることである。
今春には概要が公表され来年1月の通常国会に提出されようとしている外登法「改定案」について、今の段階では推論するしかないが、そこでは、「登録証」を「在留カード」に置き換えて上記(1)(2)(3)、すなわち在日外国人の日常生活を隈なく監視できるシステムを維持すること、そして「在留カード」の発行権限を自治体ではなく入管局が持つことによって、未登録の外国人への社会保障や教育保障における自治体の裁量権を奪うことになるであろうと思われる。
「住民の利便を増進する」と明記されている住民基本台帳法と、「在留外国人の公正な管理」を目的とする外登法を、繋ぎ合わせようとしても土台無理なのである。
「管理」法ではなく、「住民」としての地位と権利を明記した人権基本法と、それに基づく外国人住民台帳法が必要なのである。
(2008.2.6 民団新聞)