掲載日 : [2008-02-20] 照会数 : 6094
イルボンで出会いのエッセイ<7> 金益見
やったわよ 通名を捨てて
私はずっと通名で生きてきた。
在日であることを隠したかったというよりも、物心ついたときから日本名で呼ばれていたので、その名前に馴染みがあったからだ。
日本名で呼ばれていても、自己紹介の時で自分が在日であることを説明すればいいし、それで民族意識や周りの対応が変わることはないと思っていた。
そんな私が本名に変えたのは、大学院の博士課程に進学すると決めた時だ。
私は元々、研究者を目指していたわけではない。大学を卒業したら、就職して、28歳くらいまでには結婚したいと思っていた。それがひょんなことから大学院に進むことになり、それでも2年間の修士課程を卒業したら社会に出ようと思っていた。
そんな中、教授から博士課程進学の誘いを受け、予想もしなかった人生の展開に戸惑った。女子学生が大学院に残るというのは、かなりの決意を要する。
修士ならまだしも、博士に進むとなれば結婚の話は遠くなるということは、散々先輩から聞かされていた。
またすべての大学院生は、博士号取得者でも大学教員の空きが出ず、就職が決まらないという深刻な問題を抱えている。
私は迷った…。しかし、覚悟を決めて、博士課程進学を決意した。そして、そこで本名に変えたのである。
なぜ、私はその時、本名に変えたのか。
それは、せっかく博士課程に進むのなら、在学中に本を出して有名になってやろう!と決意したからだ。
本を出すなら、通名は嫌だと思った。本を買う人に、ひと目で私が在日であることをわかってほしいと思った。なぜなら、私のやっている研究が、在日と全く関係がないからである。
私は自身の研究成果を通して、在日の学生が在日を飛び越えた研究を自由にやれる時代がきたということを示したかったのだ。
そうして切磋琢磨した4年間。ついに念願の本を出版できることになった!
タイトルは『ラブホテル進化論』(文春新書、2月20日発売!)。28歳で結婚はできなかったけれど、とりあえず目標は達成しました!
どうぞよろしくお願いします!
(2008.2.20 民団新聞)