掲載日 : [2008-02-28] 照会数 : 4974
笑顔広げて10年 同胞高齢者サークル「トラヂ会」
[ 痛む足も忘れたかのようにいすから立ち上がって踊るハルモニ ]
会員80人に倍増
【神奈川】川崎市南部の同胞集住地で暮らす在日同胞高齢者たちの交流クラブ「トラヂの会」が今年で結成10周年を迎えた。23日には活動の拠点としている川崎市立桜本小学校で歌と踊り、寸劇などのミニ発表会を開いて、支援者らに明るい笑顔を見せた。この会は一人暮らしが多く、孤立しがちなお年寄りたちにとって大きな心の拠り所となっている。
桜本小で記念発表会
ハルモニ19人による華麗な「プチェチュム(扇の舞)」が始まると、会場からすかさず「チョッター」のかけ声。車いす姿のハルモニも不自由な手を動かし、一緒になって扇を広げていた。
韓国民謡の軽快な3拍子のリズムに乗って思い切り体を動かす「トラヂ体操」は、同会でレクリェーション・リーダーを務める愼玉熹さんによるオリジナル。「ビリーズブートキャンプ」に負けじと、会場で見守るハルモニたちも一緒になって手足を動かしていた。なかには「曲がった腰がまっすぐになった」という人もいるという。
芝居は、解放後の混乱期をたくましく生き抜いてきたハルモニたちの実話に基づいている。「語るにゃ辛いが、語らねば気も晴れぬ」とばかり、渡日してから貧苦のどん底での子育て、教育を受ける機会に恵まれず、自分の名前も書けなかった屈辱の日々をたんたんとしかし、明るく演じた。
ハルモニたちは高齢になったいまも大多数が無年金のため、生活は決して楽ではない。しかし、同じ境遇の仲間と語り合える場があるからこそ、一人暮らしでも笑って過ごせるという。昨年4月から参加するようになったという金奇禮さん(横浜市)は「友だちから誘われた。最初は行きたくないと思ったが、来てからは楽しい水曜日を過ごしている」と話す。
「トラヂの会」は98年1月、社会福祉法人青丘社(李仁夏理事長)が川崎市ふれあい館の識字学級で学ぶ在日高齢者のための交流の場として立ち上げた。毎週水曜日の午後、桜本小学校の旧幼稚園舎に集まり、みんなでわいわいがやがや韓国料理の食事を楽しみ、母国の歌と踊りで1日を過ごしている。ハルモニたちは、「独り暮らしで、病気でもしたら大変と思っていたが、今は頼れるところができて安心」と話している。
在日の高齢者を中心とする会だが、民族の違いを超え、日本人のお年寄りも多数ボランティアとして参加している。会員は発足当初は40人たらずだったが、現在は80人を数えるまでになった。最高齢者は103歳。重度ふれあい館館長は「ハルモニたちの歴史性と生き方から、私たちが元気をもらっている」と語っていた。
(2008.2.27 民団新聞)