掲載日 : [2008-03-26] 照会数 : 5835
<女性コラム>心を忘れた食の乱れ
今年1月から始まった料理研究家、姜連淑先生の連載「韓国 食育の歴史」を毎回、楽しみにしている。韓国料理の多彩な種類や調理法、豊富な食材には目を見張る。
以前、韓国の新聞のサイトで、現存する古文献の一つである料理書「閨閤叢書」(1809年)のなかに、100種類もの調理法が収録されているという記事を見つけた。さらに興味を持って調べていくと、最古の料理書とされるのは1459年の「山家要録」、1611年の「屠門大嚼」などがあり、そのどれにも100余り種の料理が登場しているという。
各家庭にそれぞれの味があるように、地域や季節、素材などにより現在、韓国では2000以上の料理があるともいわれる。
韓国には「食が薬」だとする薬食同源の思想がある。その思想が全ての韓国料理のもとになっていると考えただけで、心がわくわくする。時代の移り変わりのなかで、まるで宝物を慈しむかのように子孫へと受け継がれていき、現代人の心に生き続けているからだ。
近年、日本では「食の乱れ」が指摘され、新聞では連日のように食に関するさまざまな問題や、関連記事が掲載される。どの国にも固有の素晴らしい食文化はある。私たち在日も和食が優れた食事であることは身をもって知っている。
ただ残念なのは大切な人たちの体や心を創り、守るのは「食」であるというその「心」を置き去りにしてきた人が増えたということだ。姜先生は連載を通して、その「心」を教えてくれているような気がしてならない。
朴英和(東京・主婦)
(2008.3.26 民団新聞)