掲載日 : [2008-03-26] 照会数 : 7209
聞き書き絵本に 2年半がかりツルミオリニ会
[ お孫さんからのメッセージに目頭を押さえる鄭貞基さん(左) ]
[ 全夫妻の結婚式(上)若き日の鄭貞基さん(下) ]
ハラボジ、ハルモニの渡日史教えてね
自らのルーツ確認
【神奈川】横浜市立潮田小学校を拠点として活動している「ツルミオリニ会」(山本すみ子代表)が、在日1世たちから2年半かけてコツコツ聞き書きしてきた渡日史を手作りの絵本にまとめた。この絵本は8人の子どもたちの合作。折に触れて1世から話を聞き、それぞれが最も印象に残ったところをクレヨンで1枚ずつ仕上げてきた労作だ。15日、07年度最後の子供会「感謝の集い」で発表した。
8人は全員、韓日の重国籍ないしは日本国籍。今回の絵本づくりは、ハルモニやハラボジの話を通して韓半島につながる自らのルーツを確認するのが目的だった。
全羅北道茂朱で生まれ1943年、18歳の時に日本鋼管の訓練生として渡日した全泰機ハラボジと、全ハラボジの夫人で京都府生まれの鄭貞基ハルモニ(68)の話は合わせて23枚の絵に仕上げた。
家族との別れを惜しむ「廣井のおじいちゃん(全泰機さん)」の絵。日本に向かう船の絵も描かれている。泰機さんの目には涙が。一方、二人の結婚式の絵はほほえましいできあがり。絵には「わたくしたちのおじいちゃん」「わたくしたちのおばあちゃん」の文字が見える。
泰機さんは途中で亡くなったため、後半は鄭ハルモニの細腕奮闘記の様相となる。毎朝、従業員と家族、合わせて20人分の弁当をつくったという話や、豚を飼育しながら、畑では唐辛子やニンニクを栽培していたという話に、子どもたちは素直に感心していた。
子どもたちが聞き書きを始めたのは05年の秋ごろから。毎月1・2回のペースで質問用紙を手にメモを取った。この間、韓国中央会館内の在日韓人歴史資料館や新宿の高麗博物館にも足を運び、在日1世の足跡に思いを馳せてきた。
作品を見ていた父母たちは「読んだり聞いたりしたことはさらっと忘れても、こうすると絶対忘れない」と感心していた。
できあがった23枚の絵はスタッフが1枚1枚接写して小さなアルバムに仕上げ、子どもたち一人ひとりの手紙とともにこの日、鄭ハルモニに手渡した。鄭ハルモニは、子どもたちから「おばあちゃんがいるからいまの自分たちがいる」と感想を聞いて、思わず涙ぐんでいた。オリニ会の代表で元小学校教員の山本さんは「こどもたちにはハルモニたちから学んだ深い歴史にこれからの自分をつなげていってほしい」と話している。
ツルミオリニ会は、韓半島にルーツを持つ子どもたちが自らの出自に誇りを持てるようにと、地元の小学校教員らが99年4月に立ち上げた。潮田小学校を拠点にハングル学習、料理、工作、遠足など多彩な活動を続けている。
(2008.3.26 民団新聞)