掲載日 : [2008-04-02] 照会数 : 4456
<布帳馬車>天使の心持つピアニスト
アブラハムの宗教の聖典や、伝承に登場する神の使いとして創造されたという天使の一般的なイメージは、白の衣裳をまとい、背中に翼をつけて、宙を舞う愛らしい姿ではないだろうか。
空想だからもちろん、天使に会った人も話をした人もいないはずだが、多くの人たちは純真無垢、可憐などと表現する。アニメーションや絵画、ドラマなどの媒体で扱われるほど身近な存在でもある。
私はいずれの宗教にも属さないが、例えばディズニー映画に天使が出てくれば、普通に可愛いと感じる人間でもある。そんな私は先日、天使に出会った。いや、正確には天使のような女性に出会えた。民団中央会館で開かれたイベントに出演した、障害を持つ韓国人ピアニストのイ・ヒアさんだ。
観客に語りかけるその声は優しく、奏でるピアノの音色に涙が流れた。会場をさり気なく眺めると私同様、ハンカチを手にする人たちの姿があった。涙の原因を考えた。
肢体不自由を不憫だとか、気の毒に思い涙したのではない。ヒアさん以上の技術を持ち、活躍するピアニストはごまんといる。だが、ヒアさんに備わる何かを持つ演奏者はどれだけいるのか…。
この日、「人は何よりも心が綺麗なほうがいい」と思った。ヒアさんの精神は旋律に乗って私たちの魂を揺さぶり、胸襟を開かせる力を持つ。桜の季節に相応しい、爽やかな韓国の天使に心洗われた。
(U)
(2008.4.2 民団新聞)