掲載日 : [2008-04-25] 照会数 : 6204
<布帳馬車>闘争心むき出しの大打者
2000安打達成! 先日、阪神タイガースの金本外野手が40歳にして実現した瞬間、ファンの歓声が球場を包み込んだ。日本プロ野球界では、打者の2000安打、投手の200勝または250セーブが一流選手の勲章で、名球会に入会できる。金本もその資格を得たのだ。
この名球会会員で3000本以上の安打を打ったのは、唯一、張本勲のみだ。「広角打法の先駆者」「安打製造機」などと呼ばれ、史上初の通算3085安打の金字塔は今なお、輝き続けている。
広島生まれの張本は、5歳の時、被爆で右手をやけどし、小指と薬指がくっついた状態だ。戦後の貧しい時期、お腹いっぱい食べることを夢見た少年は、たまたまプロ野球選手の豪華な食事風景を目にし、ハンディを背負いながらも野球選手になることを決意した。
不自由な右手を強化するため、右手1本だけのトスバッティングを欠かさず、腕力強化に努めた。そのハングリー精神が前人未到の大記録を打ち立てたのだ。
ところが今年、3000安打を超すことが確実視されている選手が出現した。天才イチローだ。昨年の時点で2870安打。張本の大記録を破るのは時間の問題だ。
時代が違うとはいえ、スマートなイチローに比べ、張本は“暴れん坊”と呼ばれた。スタンドから差別的発言を浴びせられるたび、怒りを露にし、闘争心をむき出しにしたからだ。プロ野球選手でただ一人、被爆者手帳を持つ張本の闘争心を、在日同胞は忘れられないだろう。(W)
(2008.4.30 民団新聞)