掲載日 : [2008-04-25] 照会数 : 8428
「帰郷祈念碑」除幕へ 黒田福美さんが奔走
[ 黒田福美さん ]
朝鮮人特攻隊員悼む…慰霊のツアーも
太平洋戦争中、特攻隊員として沖縄の海で戦死した卓庚鉉さん(24)を悼む「帰郷祈念碑」が5月10日、卓さんの生まれ故郷、慶尚南道泗川市で除幕する。卓さんの慰霊を願って17年間にわたって奔走してきた女優、黒田福美さんの努力が実を結んだ。黒田さんは除幕式に合わせて平和と交流を考える訪韓ツアーも企画している。
卓さんとおぼしき青年は91年7月、黒田さんの仕事先の神戸で、夢の中に現れた。黒田さんによれば、「自分は飛行機乗りだ。戦争で死んだことは後悔しないが日本の名前で死んだのが残念だ」と語ったという。
95年、黒田さんは大手新聞のコラムにこの一件を書いた。すると、新聞を見たという靖国神社の広報から電話が入り、神社付属の軍事博物館「遊就館」で卓さんの遺影と対面できた。黒田さんはこのとき、「青年の魂が呼んでいる」との思いをあらためて確かなものにしたという。
青年の名前は「光山文博」。卓庚鉉の本名は、黒田さんが沖縄戦の犠牲者の名前が刻まれた「平和の礎」を訪れ、自ら確認した。遺族についても「平和の礎」に刻む同胞戦死者を調査していた洪鍾・明知大教授の手を借りて突き止め、二人で繰り返し遺族を説得して石碑建立の承諾を得た。碑建立の話は地元の里長を通じて金守英・泗川市長の知るところともなり、同市が3000坪の土地を提供した。黒田さんは「名前を奪われた民族の悲しみを教えてくれた卓さん。卓さん一人の慰霊ではなく、戦争の犠牲になり、今も民族名を求めてさまよう多くの魂が、『祈念碑』除幕を機に故郷に帰ることを願ってやまない」と語る。
ツアーは5月9日出発。11日ないし12日までの訪韓期間中、大田昌秀・元沖縄県知事と洪教授を迎えたシンポジウムや韓日交流慰霊登山などを予定している。問い合わせは三進トラベルサービス内の事務局へ。℡03‐5256‐7178。
(2008.4.30 民団新聞)