掲載日 : [2008-04-25] 照会数 : 11156
和やかに厳粛に 李大統領歓迎レセプション
[ 歓迎レセプションで挨拶をする李明博大統領 ]
[ 陶芸家の沈寿官氏(右)製作の香炉を鄭進民団団長から贈られた李大統領 ]
先進化・統一に向け在日同胞との紐帯さらに強く
李明博大統領を歓迎するレセプションは、終始笑いや拍手が絶えず、大統領夫妻と在日同胞参加者とがひざを付き合わせ、親しく意見を交わす場となった。しかし和やかな中にも、大統領は韓国と在日同胞の紐帯をより強くしていくと述べ、在日側も韓国の先進化と南北平和統一の課題に積極的に参与していくことを誓う、厳粛な場ともなった。李大統領の激励辞と一問一答の要旨は次の通り。
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大統領挨拶
誇り得る国へ全力…3・4世にも関心を持つ
在日同胞の支援に感謝
休日にもかかわらず、たくさんの方々が集まってくださり、本当に感謝します。
先の大統領選挙で歴史にない大きな支持を受けた。それもこの席にいらっしゃる在日同胞皆さんのおかげだと考える。
皆さんは、韓国政治にあって中立的立場を取ってきたが、今回だけは力を集めて私を支持してくれた。それはなにより大韓民国を心配する気持ちからではないかと思う。
私の就任式に1000人を超える在日同胞が来られたのに、寒い天気に席がなく、立っていた方が多かったと聞いた。どんなに申し訳なかったことか…就任式をもう一度しなければならないと思った(大きな笑いと拍手)。
金融危機やオリンピックなど大事な時、いつも同胞らが率先して祖国を助けてくれた。南大門の焼失の時も、一番最初に在日同胞皆さんが(復元誠金を)募金してくれた。本当に有難いことこの上ない。皆さんの愛情と祖国に対する支援は、大韓民国が貧困から漢江の奇跡を成し遂げるうえで大きい力になった。改めて感謝する。
先進一流国家建設には、なによりも経済がよくならねばならないが、必ずそのようにする。経済協力を実質的にさらに強化したい。日本経済人らとの会談を通じて、韓国企業家らとの合作や進出について議論する。
無理な謝罪 謝罪でない
私は就任式の時、福田総理に「未来に向け手を握っていこう」と提案し、福田総理も賛成し「新しい韓日関係を築き共同繁栄と東北アジアの平和をともにつくろう」と約束した。明日の福田総理との会談で、その約束を再度する。形式的な出会いにならないようにする。
そんなに遠くない歴史の中で、心が痛んだこともあったが、過去だけ持って今日を生き、また未来を生きることはできないのではないか。日本に対して謝れと要求はしない。真心からにじみでる謝罪をしてこそ真の謝罪であり、無理にする謝罪は謝罪でない。
明日の(福田総理との)会談では、先ほど鄭進団長が述べたが、在日同胞社会の念願の地方参政権問題にも言及する(盛大な拍手)。
日本には来たくて来た人々もいるが、やむを得ず来た人々もいる。厳しい状況のもとでも力強く、立派に生きてきた。そうであれば、ここらで地方参政権を与えてもいいのではないか。
わが国は(外国人が)永住権を取得すれば3年以内に選挙権を得られるよう、国際社会の規範に合わせた法律をつくった。日本もこれを参考にすべきだ。この問題の解決のために私たちも引き続き努力する(盛大な拍手)。
在日経済が良くないという話を聞いている。福田総理、民主党代表、公明党代表とソウルで会った時にも、在日同胞経済が厳しいという話をした。韓日間で解決できるよう話をしたい。また、在日同胞企業が韓国にもっと投資できるようにしたい。
同胞企業の投資促進を
日本に他の要求はないが、今度は経済協力を実質的にさらに強化しようと思う。私たちが日本に毎年300億㌦の貿易赤字を出している。私たちが成長すればするほど貿易赤字はさらに膨らむ。韓国企業らが技術開発をするなど常に努力し、日本企業も協力する方向に出てくれることが必要だ。それでこそ真摯な関係になる。
スローガンや歌としての統一でなく、本当に統一をどのように実現するのか心を開いて話す時になった。核を放棄することが北韓を発展させる。何が南北7000万人の助けになるか、どうすれば統一を実現できるかを、南北が心を開き話さなければならない。
在日同胞の皆さんが、これまで母国に対して誰よりも心配してくれたかを、誰よりもよく知っている。同胞らが母国と今後も深い関係を持てるように仕事をしたい。2世・3世・4世らが母国の文化と歴史を知ることにも政府が関心をもって臨みたい。
任期中の5年間に世界に誇れる国にしたい。私は権力を行使したり、金を儲けようと大統領になったのではない。全世界に誇れる大韓民国の基礎をつくるのに全力を捧げる。
建国60周年記念の行事の時には、必ず皆さんのために多くの席をつくります(盛大な拍手)。今後もまた日本に頻繁に来ることになっており、その時にもまた皆さんと会いたい。今日は本当にありがとうございました。
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質問に答えて
「参政権」共に頑張る
対北懸案解決…国際的協調で
−−地方参政権問題の早期解決のために格別な指導と支援を(朴昭勝・民団中央権益擁護委員長)。
その話は必ず出ると思っていた(大きな笑いと拍手)。日本にきて、地方参政権に対する在日同胞の熱望がどれくらい強いかを、もう一度確認することができた。皆さんには継続努力してほしい。韓国の議会と政府も実現へ積極的に努力する。地方参政権は世界の先進国では実施している基本的問題である。日本も基準に合うようにしてほしい。
実現へともに頑張りたい。
−−北韓核問題の完全解決と北韓住民の人権問題、そして脱北者・拉北者・軍捕虜問題の一日も早い解決への尽力を(呉英義・民団中央執行委員)。
日本では拉致者問題が重要だ。拉致者問題が進展せず、日本社会の北韓に対する認識が悪くなった。その上、在日同胞、事業をする人にも影響あるのは事実だ。韓日関係は肯定的な面もあるが、北韓に対する日本の考えは複雑だ。
南北間には漁民の拉致、国軍の捕虜、離散家族問題など人道的な問題が多い。こうした問題の解決は容易なことではないが、解決しなければならない。
原則的には6者会談で核を放棄させることと、北・日関係の拉致問題は別個の問題だ。今までは韓国、米国、日本がそれぞれ別に対処してきたが、これからともに力を合わせ協力していけばよりいっそう効果的だ。
一度には無理だろうが、南北関係、北韓と日本の関係を解決していくのに努力したい。
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鄭進団長の歓迎辞 要旨
「韓日共生実現の機に」
在日同胞60万の真心をもって、李明博大統領ご夫妻の初訪日を歓迎します。日本に到着後、直ちに駆けつけて下さいました。
大統領は産業化と民主化を同時に成し遂げたわが国の歴史を、「奇跡」でも「神話」でもない、わが国民の血と汗と涙の結晶だと申しました。私たちも異国にありながら、大韓民国と苦楽をともにしてきました。
6・25韓国戦争による国家存亡の危機に際しては、在日学徒義勇軍が参戦し、経済発展のためにはセマウル運動支援をはじめ、ロッテグループや新韓銀行に象徴される本国投資、ソウルオリンピック成功のための誠金、IMF事態時の外貨送金運動など、祖国産業化の土台を固める役割を担ったと自負するものです。
大統領は、建国60周年を迎える今年を「先進化元年」と宣言しました。また、南北統一は理念に拠ることなく生産的に推進しなければならず、韓半島と東北アジアの平和のために北韓の核は完全に廃棄されねばならないとし、非核・開放の道を選択すれば南北協力の新たな地平が開けると強調しました。これらの政策に私たちは、積極的に参与するものです。
韓日首脳会談においては、21世紀を貫く未来志向的な韓日関係を築けるよう期待します。在日同胞は日本人との共生を願い、永住外国人の参政権を獲得すべく14年前から運動してきました。今回の大統領の訪日が、名実ともに韓日共生を実現する地方参政権獲得に大きな契機となるよう期待します。
最後に在日同胞を激励して下さる心遣いに、今一度感謝申し上げます。
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記者会見に「龍飛御天歌」引用
根を深く張って風に揺るがぬよう
思いを込めて大統領
李明博大統領は21日の韓日首脳による記者会見で、東北アジアと世界の平和繁栄のために「(韓日両国は)強い風に揺らぐことのない、根を深く張った木」のような関係にならなければならないと語った。
これは「龍飛御天歌」の「根の深い木は風に動じず、花は咲き乱れ、実はたわわであり/源の深い泉は干ばつでも枯れず、河となって海へと注ぐ」の一節からの引用である。
「龍飛御天歌」は、文字通り龍が飛んで空を制御したという意味で、朝鮮朝第4代世宗(在位1418〜50)時代に、ハングルで著された最初の叙事詩であり、朝鮮朝建国の説話を詠い、末永い発展を祈ったもの。
東北アジアのためにも韓日両国は、根をしっかり張った大木として強い風にも立ち向かい、源の深い泉として大地を潤す大河となろう、との李大統領の思いが込められている。
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在日3世が司会の大役
民団東京大田支部 部長の柳永美さん
李明博大統領歓迎レセプションで、韓国語と日本語を駆使して司会の大役を務めたのは民団東京・大田支部の事務部長、柳永美さん。柳さんはこう話す。
お話があったとき、プロの方がなさると思っていたので、びっくりしました。アボジ(柳再萬さん)が韓国戦争時の学徒義勇軍の一員として招待され、一緒に参席できることと、大統領と間近に会えるという思いで引き受けました。
在日3世としてプライドがあって、失敗したらどうしようという不安から上がっていましたが、途中からは私のペースで進行できました。大統領のテーブルのジュースがこぼれた時は、私のジュースをお持ちしました。
大統領は激励の言葉のなかにも、在日など海外にいる同胞への関心が深いように感じられました。
(2008.4.30 民団新聞)