掲載日 : [2008-05-28] 照会数 : 5792
<女性コラム>母になり知る親の恩
「あっ!いけない」夕方、子どもたちと入浴中に今朝の電話を思い出した。去る2月、2人目の子が生まれ、仕事と慣れない子育ての慌ただしい日々。毎日が戦争だ。
切迫子宮破裂という聞き慣れない症状で入院後、苦労して産んだ子だからこそ嬉し涙も流したが、最近、韓国のチンジョンオンマ(実家の母)が恋しくて、気付いたら泣いている意外な自分もいた。
「長女だからしっかりしなきゃ」という思いで、親に甘えることもなく高校を卒業。
それから始まった一人暮らし、そして結婚。何事も自分で決めて自分で解決してきたせいか、いつしか一人で大きくなったような気がして、親に偉そうな口を利くことも多かった。
そんな私が「あーオンマ(母)もこうやって私たちを育てたんだろうな」と、2人目の子どもをあやしながら、母の苦労と子どもへの思いがようやく分かってきた。
チンジョンオンマもすでに古希を過ぎて気弱になってきたのか、このごろは高い国際電話代を気にせず、たわいない電話をかけてくるようになった。
今朝も出勤準備で1分1秒が貴重な時に電話がかかってきて「ごめん! 後でかけるから、変わりないでしょう」と母の返事も待たずに受話器をおろした。結局、電話はかけずじまい。
「『風樹之歎』。親孝行したい時に親はなし」
風呂上がりの子どもたちに「今すぐおばあちゃんに電話しようか!」と言いながら、私はパジャマを着せる手を急がせた。
鄭錦伊(埼玉・団体職員)
(2008.5.28 民団新聞)