掲載日 : [2008-05-28] 照会数 : 5963
<社説>200期迎えた中央組織学院の使命
民団人の連帯育む源泉に
民団の研修制度のなかで、根幹的な役割を担ってきた中央組織学院が200期の節目を迎えた。修了者は31年前の77年10月に第1期生36人を送り出して以来、延べ5911人を数える。
立場超えて学ぶ
組織学院は規約第7章第67条(機関員の訓練)に基づく「中央組織学院規定」によって運営される。「民団の基本理念と組織活動に関する理論と実務の研修を通して各級機関の幹部を養成」するのが目的だ。現在では中央本部をはじめ地方本部、支部の3機関役員に履修が義務づけられ、3機関長の立候補に際しての資格要件にまで強化された。
規約・規定による研修制度であることが、組織学院の存続を保証してきたのは確かであろう。しかしそれだけで、200期の回数と6000人になろうとする修了者の輩出は説明しにくい。当初の計画では事実、400人近い専従実務者だけを対象にしていた。ところが、修了者たちの間で内容に対する評価が高く、それが非専従幹部の学習意欲を引き出すところとなり、対象を拡大した常設の研修機関に発展させてきた経緯があるのだ。
現在では、規約・規定に背中を押されただけの研修生も少なくない。研修日程は当初の3泊4日から2泊3日に短縮されたものの、朝7時から夜8時半までの合宿形式による共同生活はそのままだ。一定の規律のもとに拘束される時間が長いため、逃げ腰になりやすくもなろう。
ボランティアの幹部からは、自身の経済活動の都合から時間が取りにくいとの声がよく聞かれる。専従者でもベテラン組には、既に分かっていることなのに何をいまさら学ぶのか、という既知意識も働く。参加に前向きになりたがらない事情はさまざまだ。
だが、そうした「イヤイヤ組」も、修了証書を手にする頃には様変わりし、「参加してよかった。今後の活動に生かしたい」と口々に語ってくれる。研修最後のプログラムである評価会での発言を総合すると、その理由は大きく二つに集約されよう。
第一点は、民団の歴史的な存在意義と事業について体系的に理解でき、思いのほか自己啓発につながったとの自覚だ。第二点は、研修生どうしの情報や友情のやり取りを通じて、さまざまな地域の成功体験や悩みを分かち合い、同じ民団人としての同志的な信頼が芽生えたという喜びだ。
組織学院は、民団本体ばかりか婦人会や青年会など各傘下団体も対象にしており、地域・年齢・性別・職位に関わりなく参加できる。中央本部はむしろ、研修生が特定の地域や成分に偏ることがないよう努めてきた。しかも、中央本部や大手本部の高位幹部も支部の専従者も、そこでは対等な研修生となる。
研修中は10数人を基準に複数の班を組み、共同生活の基礎単位として行動をともにするだけでなく、それぞれテーマを決めて班別討論を行う。そうした機会がなければ話し合うことも、接することもないであろう多様な立場の幹部たちの密度の濃い触れ合いが、貴重な教育・啓発効果を生み出す源泉となってきた。
強い同期意識も
一律ではもちろんないとしても、期によっては強い同期生意識が培われてもいる。民団を支えるのは、こうした人的ネットと集合的なアイデンティティーを基礎にした持続的な連帯である。仲間のいる集団に貢献したいという動機は大きな力を生み出す。
組織学院は民団の柱の一つとして、全国規模での問題意識の共有と実務的な統一性を確保し、民団人としての気概を堅固にしてきた。だが、規約・規定によって1回修了すれば再び履修することを要求されない。この方式にとどまることなく、より高いレベルの要求にも応えるべきではないか、との意見も強まってきた。
民団・総連という2大組織が対立・対峙する分かりやすい構図は消え、総連の弱体化が著しい現実も民団の求心力を高める方向には必ずしも作用していない。在日同胞社会は価値観の多様化と人的・物的資源の漸減によって、構造的な地殻変動を早めており、同胞たちのエネルギーが分散を余儀なくされているのは否定できない。
同胞社会が流動期から再編期へと転換し、凝集しようとする力を呼び戻すためには、再編の基軸となる民団の活動力強化が不可欠だ。共通の目的を掲げ、挑戦することは組織体の生命である。組織学院も自ずと進一歩を期すほかなく、200期の節目を契機に新たな使命の定立が求められよう。
(2008.5.28 民団新聞)