掲載日 : [2008-05-28] 照会数 : 6164
韓国食育の歴史<5> チョッカル(塩辛)
7世紀には珍重の記録
チョッカルは魚介類の貯蔵を目的とした発酵食品の一種で、発酵する間にタンパク質がアミノ酸に分解され、魚の骨はカルシウムに変わり特有の味と香りを出す。韓国の文献上に水産発酵食品として最初に記録されたのは西暦683年「三国史記」の新羅本紀になる。
第31代王の神文王が王妃を迎え入れる納采の品目に米、醤類、油類、干し肉の脯、酒とともに醢(しおから)が明記されている。
チョッカルを大別すると、食塩だけを使用する塩漬醢と、真ガレイ、ハタハタなどを塩引きしたものに、米飯や栗飯と大根を合わせて香辛料を加えて発酵させた食醢(シッケ)がある。チョッカルは魚介類に10〜20%の塩を加えるのが特徴。また食塩添加量が10%で代表的なものは、牡蠣チョッ、腸を塩辛にしたチャンナンチョッ、博多名物の明卵(明太子)チョッがある。この明卵チョッのルーツは韓国になる。
韓国の東海岸を回遊する明太魚は、朝鮮朝末期まで漁獲量が最高であったといわれ、この時代から明太チョッは作られたと推測される。
現在も明太魚が水揚げされると、直ちに内臓を取り出し卵は明卵チョッに、腸やエラなどはチャンナンチョッとして調理される。そして身は乾燥台に吊して零下20度の寒さと吹雪のなかで凍結乾燥させて、韓国で最高品として珍重される黄太となる。塩分を20%加えたものは6〜12月の間、冷暗所で貯蔵することにより特有の旨味が生ずる。 この発酵した魚肉に唐辛子、香味草、ごまなどを加えると、おかずや酒のつまみになり、チゲの味付けにも使われる。キムチ類にチョッカルは絶対不可欠な存在である。
ソウルを中心とした畿湖地方では主にアミえびの塩辛を使う。このアミえびは産地や漁獲時期によって、作り方や味も多少異なる。身が締まっている6月に捕れたアミえびで熟成させたアミの塩辛は、最高級品として値段も高い。
さらに食醢は低塩、高タンパク質、高カルシウムの滋養食品でもある。この食醢料理は北韓の咸鏡道の郷土料理として知られ、16世紀ごろの文献にもソウルの両班家でも常食されていたとされる。現在、東海岸の束草(江原道)の一角にある咸鏡道失郷民居住地であるアバイマウル(父さん村)で、真ガレイの食醢が作られソウルのデパート食品売り場に流通されている。
三方を海に囲まれた韓国では、魚介類の塩辛の加工法を早くから発達させ、その数は50種におよぶといわれている。
料理研究家 姜連淑
(2008.5.28 民団新聞)