掲載日 : [2008-06-11] 照会数 : 5073
<寄稿>「韓日子ども工芸交流」を終えて
[ 田俊培(ジョン・ジュンべ) 1976年韓国の慶尚南道梁山市生まれ。釜山慶星大学校工芸デザイン学科卒業後来日、武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程卒業。東京学芸大学大学院教育学研究生修了。現在、韓国伝統工芸振興協会会員、韓国美術家協会会員など諸美術協会の会員活動、寄稿・創作活動も行う。 ]
[ 会場には多くの家族連れが訪れ作品を熱心に見ていた ]
理論より実践の隣国理解
ディレクター 田俊培
「近づきたい」心育つ
言葉や違和感を苦にせず
4月27日から5月7日まで、東京・新宿区の新宿パークタワーで「韓・日子ども工芸交流展‐友情の掛け橋」が開催された。この交流展を通して隣国の子どもたちとの友情関係を築き、持続的な文化交流の礎を築きたかったと話す、ディレクターを務めた田俊培さんに寄稿していただいた。
持続化の礎共働で築く
このイベントは国際化と叫ばれる時代に、果たして何が真の国際化であるかを探りながら、子どもを対象とした文化教育と文化交流に力点を起きました。さらに子どもの目線から隣国と隣国の友だちのことを理解させる(知らせる)ために、言葉の壁を越える工芸(工作)作品の展示とさまざまな文化行事を実施し、将来に向けての持続的な文化交流の礎を築くことも目的としました。
何より、もっとも大切な収穫は両国の小学校まで足を運び直接、子どもたちに接しながら教育現場の現実を把握し、これからの実践研究の方向性を得たことです。また、その子どもたちのための行事を企画し、実際にそれを実現させたことは大きな成果でした。何ごとも実際にやってみないと分かりません。「始める」第一歩が大切であり、さらに実行に至るまでにはいろいろ大変なことがたくさんあり、それもまた次回へとつながっていきます。
実際にこのような行事は誰でも思い浮かぶでしょう。しかし、その考えを実践に移す事例は少なく、異国で行事を開くことができただけでも大きな意味を持つと思います。
結果的にはすべてが盛況のうちに終わりましたが、結果より過程に比重を置きたい気持です。私個人も〞東奔西走〟した1年でしたが、大勢の方々の助けがあって実現した韓・日子ども交流行事でした。
両国の子どもたちの作品を観ながらどちらが上手か、下手かと話す方もいましたが、決してそのような優劣を比較するための場ではありませんでした。初開催にも関わらず、実に多くの方(約1万人)が立ち寄り、それぞれの視線で子どもたちの作品から何らかの思いを心に抱くきっかけとなったならば、また未来につながる意識を提供することができたならば、これこそ真の成果ではないかと思います。交流展では清州国際工芸ビエンナーレと日本のNPO市民芸術活動推進委員会が共同主催し、韓国政府機関と全国造形教育連盟など韓日の教育機関が後援しました。期間中、両国の工芸作品(工作)や絵画176点を展示しました。
工芸作品は、昨年開催された2007清州国際工芸ビエンナーレの子ども工芸公募展で受賞した、主要受賞作品48点と当時、招待出品された東京都内17カ所の小学校児童68人の作品です。また絵画作品は韓・日各30点で、韓国の釜山恵化初等学校と日本の東京新宿区立落合第六小学校の子どもたちが出品してくれました。
韓国の子どもたちは、「いい作品を作ろう」という先生の意見がかなり反映されているため、全体的にまとまった作品が多かったようです。一方、日本は材料の選択も幅広く、自由な発想でのびのびと作られた作品が大半でした。
そのほかにも直指(ジッジ、世界最古の金属活字)の紹介と体験のほか、韓国から子どもたち19人(指導教師、保護者含め25人)が参観団を組んで日本を訪問し、一緒に合唱(東京韓国学校)、茶道試演(釜山恵化初等学校)、印刷体験、餅づくり、日本伝統劇「能」の試演(落合第六小学校)、韓服(ハンボック)試着体験、伝統遊びなど両国の代表的な文化を披露し、子どもたちの友情を育むための行事となりました。
無形の価値求める交流
落合第六小学校の先生方や子どもたちは韓国の子どもたちのため、1カ月前から準備と練習をして花のアーチを作って温かく歓迎し、両国の国旗を作ってそれを振りながら韓国の国歌や「故郷の春」の合唱をしました。
落合第六小学校の子どもたちは今回の貴重な経験を通して、外国人に対する違和感はなくなり、言葉は通じないけれど相手に近づきたいという変化が見られました。また韓国の子どもたちも学校教育を通して、それまで偏見を持っていた日本や日本人に対して、興味を持ち始めたようでした。
今の子どもたちがやがて10年、20年後は両国の担い手としての人材になってくれることでしょう。今すぐ目に見える可視的な成果より、目には見えない「無形の価値」を求めて旅する子どもたちとの交流活動は、楽しみ、やりがい、幸せ、そのものです。
(2008.6.11 民団新聞)