掲載日 : [2008-06-28] 照会数 : 4924
<寄稿>韓中戦略的パートナーの意味 朱宰祐
安保次元も協働へ…東北ア安定に大きく寄与
慶熙大学校中国語学部教授 朱宰祐
韓米関係復元への憂慮払拭
李明博大統領は5月27日から30日まで、国賓として中国をはじめて訪問した。4月の米国と日本の歴訪は国賓級「実務訪問」であった。初の公式な国賓訪問国が中国であった事実だけでも相当な意味がある。
それは大きく二つの側面から言えるだろう。一つは、「韓米関係の復元」を強調する外交路線に対する中国の憂慮を払拭させ、中国との間に信頼構築の基盤を整えるためだ。もう一つは、中国と「実用外交」を展開すべく相互の戦略的価値を確認するためである。
今回の韓中首脳会談は、両国の戦略的な国家利益に沿うものであった。まず中国は、李大統領が初めてとなる国賓訪問の招請を受諾したことに感動を受けた。そして、これへの対価として両国関係を「全面的協力パートナー」から「戦略的パートナー」に格上げさせた。李大統領は、中国最高指導者との連鎖会談を中国の憂慮を払拭させる機会として有効に活用し、韓国の外交が韓米関係の復元を優先するからと言って、韓中関係を低く見るとか、中国を「疎か」にする意味ではないことを直接説得することができた。
中国が韓国の国家利益の面において持つ意味はとても大きい。「最大」「最高」の修辞を抜きにしては韓中関係を説明できない。こうした認識下に、李大統領は両国関係を戦略的パートナー関係に格上げさせる外交的成果を収め、中国の胡錦濤国家主席が強調したように、これを通じて韓中関係は新しい段階に飛躍した。
両国間の戦略的利益の共通性は、今回の訪中結果として採択された「共同声明文」でも確認された。そこで両国首脳は、経済通商協力の拡大、人的文化交流の拡大、地域や国際舞台においての協力強化など、過去のいかなる共同声明文よりも実質的な内容を盛り込んだ。
これらを実践するために両国首脳は、韓中間の自由貿易協定(FTA)の積極的な検討及び中国側の韓国投資の奨励、ビザ手続きの簡素化、中国の内陸地域(武漢)における韓国総領事館の開設など、実質的な外交的努力と措置を推進することで合意した。また、国際舞台や東北アジア地域次元での協力を具体的に実現する方案の中で、韓中日による3カ国首脳会談の開催の必要性について一致したことが注目に値する成果である。
多岐にわたる戦略的な利益
同じ意味合いで共同声明文は、今回の訪中の二つ目の目的を積極的に反映したものと評価できる。李大統領が堅持する「実用外交」は分かりやすく言えば「WIN‐WIN」戦略が根幹を成すものだ。韓中両国関係が「戦略的パートナー」に格上げされたことは、両国が共有できる相互戦略的利益と価値がかなり幅広く存在することを意味する。このような認識は両国の戦略的利益と価値が、もはや経済通商分野にだけ限るものではないという認識から始まる。
もちろん、2003年に韓中両国関係が全面的協力パートナー関係へ発展したことで、このような認識はすでに存在していたといえるだろう。しかし、その違いはこのような認識を両国が戦略的次元で構想できるということにある。
両国首脳が強調したように韓中関係は過去16年の間、成熟かつ建設的に発展してきた。その結果、両国の戦略的利益は政治、外交、安保、経済、通商、文化など、あらゆる分野で全方位的に拡大された。おのずから相互戦略的利益と価値が増大されてきたのであり、これを共同で具現するためには戦略的な協力が必要である。
北核解決へのかなめ石にも
しかし、現実的には難しい点が多い。このような現実を乗り越えるために戦略的利益、すなわちお互いにWIN‐WINとなる共通利益分野で、対話を通じた協力を増大させることが戦略的協力の核心である。これを具現するために、両国首脳は多次元的かつ多方面においての首脳級、高位級、実務級会談の定例化の必要性にも一致した。その中で最も注目をひくところは両国間の「安保戦略対話」の制度化の合意である。
李明博大統領は当選後、北核問題が6者協議を通じ全面的に解決されることを期待する立場を堅持してきた。これは中国の立場と一脈相通じている。今回の訪中で、「非核・開放・3000」構想に対する中国側の支持を得られなかったことに一部で憂慮もあるが、これは別個の問題である。
なぜかと言うと、これは北核問題の解決を前提にしているからである。その代わりに北核問題の平和的解決のために6者協議の中で参加国との協力を強調してきたし、この中では中国との協力が要(かなめ)である。この点は北核問題の解決が、韓国と中国に密接な協力と合意が求められるためだ。このような視点で中国との「安保戦略対話」の制度化はこれを可能にする試金石になるだろう。
最後に、李明博大統領は発足以来、いわゆる「国格外交」、「寄与外交」を強調しながら、国際社会の繁栄と発展に貢献できる外交の推進を明らかにしてきた。共通価値観の創出に基づいた李明博大統領の外交路線の基調は、今日、中国が追求している「調和の世界」の創出という価値観と通ずるものである。これは、相通ずる価値観を強調する李明博外交路線の基調にかなり符合している。
今回の首脳会談を通じて韓中両国は、国際社会に対する共通の価値観を確認し、これに貢献できる事案についての協力を国際舞台や地域で強化することを約束した。
したがって、今回の韓中首脳会談で李大統領の実用外交の具現と具体化を可能にする礎が築かれたと言っても過言ではない。
(2008.6.25 民団新聞)