掲載日 : [2008-06-28] 照会数 : 5985
近づく09年外登法全面改定
外国人住民台帳再編へ当事者からヒアリング 総務省
「適法に在留する外国人住民の台帳制度」の検討を進めている総務省は16日、同省で「外国人台帳制度懇談会」を開き、4人の外国人有識者から意見聴取を行った。このなかには在日韓国人の金両基氏(評論家、元静岡県立大学教授)と日本国籍取得者の李洙任氏(龍谷大学経営学部教授)の2人が加わっている。
4人は総務省が検討を進めている「適法な在留外国人の台帳制度についての基本構想」に対して意見を述べ、同懇談会のメンバーと意見交換を行った。席上、金両基さんは、「在留カード」「外国人住民台帳」について「管理だけが見えて、人間を原点とする理念、21世紀の国際化のビジョンが見えてこない」と述べたもようだ。
総務省は今秋までに外国人の住民台帳整備に向けた原案を作成し、外国人登録制度を廃止して在留カードの導入を軸とする「新たな在留管理制度」の検討を進めている法務省とともに09年の通常国会に新たな関連法案を提出する。金さんは、「案が作成される前に在日は声をあげるべきだと思う。案が出た後の修正には力が数倍必要だ」と話している。
在留カードで管理強化も
【解説】外登法に代わる新たな在留管理制度の真の狙いは、不法滞在者が増えているなか、テロ対策・外国人犯罪防止を口実に在日外国人の日常生活をくまなく監視できるシステムを維持し、強化することにあるようだ。
たとえば新制度の下では、法務省・地方入管局の権限が格段に強化されている。最寄りの市区町村は、在留カードの「交付と管理」業務のごく一部を「経由事務」として行うにすぎなくなる。すなわち、自治体本来の業務機関ではなく法務省の「下請け機関」と化すのではとも見られている。
そうなると、「自治体の裁量(自治)」はもっとも基本的なところで強い制限を受け、オーバーステイの外国人にも行政サービスの必要から外国人登録証を自治体の裁量で発行するといったことはできなくなるだろう。なぜなら、新制度の対象となるのは「適法に在留する外国人」だからだ。外国人は同じ地域住民でありながら、その一部は「福祉」を失うことになる。
では、新法に変わって適法に滞在する外国人には利便性の向上が図られるだろうか。
現行制度では個人単位で登録されて世帯ごとの現況を反映していなかった。また、転出届の提出も義務化されていないことから、就学手続きや健康保険加入などの基礎資料としては不備が多いと指摘されてきた。
新台帳制度では、日本人と同じく世帯単位で把握し、転出届のほかにも出生・死亡・婚姻などの各種届けを反映させる方向で検討されている。この結果、「国民健康保険や介護保険、児童手当などの漏れも防ぐことができる」という。在留カードで金融機関における口座開設、店舗や住居の賃貸借契約、そのほか生活の様々な場面で身分証明が可能となり、「わが国で生活していくうえでの利便性が向上すると思われる」とメリットを強調する。
だが、これだけをもってして「日本国民と同様の制度」というのは無理がある。そもそも、日本人は住基カードの受理と常時携帯は義務づけられていない。一方で在日外国人にだけは刑事罰を持って強制するというのでは、やはり、「似て非なるもの」といわざるをえまい。
新制度の対象者は240万人余りと推定されている。ちなみに在日韓国・朝鮮人など特別永住者については、外国人登録証明書はなくす方向だ。外国人登録証にかわる新たな証明を発行するかどうかは検討中とのことだ。
(2008.6.25 民団新聞)