掲載日 : [2019-06-26] 照会数 : 7299
世界のアニメーションシアターWAT2019...韓国作品を初紹介
[ 「花咲く手紙」の一場面©KANG Hui‐jin A Letter<That Bloom Flowers> ] [ 「越えられない川」©KIM Heeseon<The River> ] [ 「父の部屋」©JANG Nari<MY FATHER’S ROOM> ] [ 伊藤裕美代表 ]
分断、脱北、DV
現実に向き合う女性たち
韓国、日本、スウェーデンの女性監督によるドキュメンタリー・アニメーションを特集する「世界のアニメーションシアターWAT2019」が29日から7月26日まで、東京・世田谷区の下北沢トリウッドで開かれる。20回目となる今年は、WAT初の韓国と日本の作品を、アニメーションをリードするスウェーデンの映画と共に13本、17話を上映する。
WATを主催するオフィスH(オフィスアッシュ、企画・主催)代表の伊藤裕美さんが、海外の短編アニメーションを日本に伝えたのは1999年から。世界最大規模のフランス、アヌシー国際アニメーション映画祭などに出向き、自ら作品を集めてきた。
近年、社会の変化とともに、アニメーション界は女性監督がより自由に社会問題やさまざまな生き様を写し撮るようになってきた。韓国でも、さまざまな人生を描き、自分のメッセージを伝えるドキュメンタリー・アニメーションの若手女性監督たちが台頭している。今回、伊藤さんが紹介する韓国映画は8本だ。
脱北した20代の女性2人が語る、韓国定着にまつわる出来事や故郷への思いを描いたカン・ヒジン監督の「花咲く手紙」、若い目線で南北問題を直視するキム・ヒソン監督の「越えられない川」、女性労働者の闘争をレゴブロックでアニメにしたパク・ソンミ監督の「希望のバス、ラブストーリー」は、社会的メッセージを込めた作品。
幼い頃に父から受けた家庭内暴力とそれを乗り越えようとする娘である自身の実体験を客観的に捉えたチャン・ナリ監督の「父の部屋」、記憶の中の祖母の姿を描いたハ・スファ監督の「ドアスコープ」、自らのペットロス体験から、ペットロスの仲間へ勇気を与えるファンボ・セビョル監督の「ユー・アー・マイ・サンシャイン」、中年女性の夢を韓流風に描いたハン・ビョンア監督の「ミセス・ロマンス」は、私的物語を伝える作品。
そして、韓流ドラマに憧れ、韓国へ行く夢を持ったエチオピアの少女を描いたキム・イェヨン、キム・ヨングン監督の「フェルーザの夢とともに」。
伊藤さんは「韓国が抱えている現実をストレートに表現しようとしているもの、社会全体の日本と共通する部分のものもある。そういう意味では幅広く選んだ」と話す。
WAT2019の女性監督特集に至ったのは「花開くコリア・アニメーション2018」名古屋会場でカン監督と出会ったのがきっかけだ。カン監督は「花咲く手紙」の制作にあたり、脱北した青少年の教育支援施設でのボランティアなど行いながら、取材を行った。
「彼女の創作エネルギーと社会的な視点に感服し、作品を日本で上映したいと思った」
また「越えられない川」については衝撃的と話した上で、「韓国の人は若い世代であっても身近に歴史がある。絶対、紹介しなければいけない」という。
「韓国の女性監督たちが、これだけ社会的なテーマをアニメーションという表現で取り組んでいるのをまずは知ってもらいたい」。伊藤さんはそう語る。
上映は東京を皮切りに、京都、姫路、名古屋などで巡回を予定している。1プログラム一律900円。3回券一般2100円、学生1800円。詳細はWAT公式サイト(http://www.wat‐animation.net/#event)、問い合わせ下北沢トリウッド(03・3414・0433)火曜定休。
(2019.06.26 民団新聞)