掲載日 : [2018-08-14] 照会数 : 7768
時のかがみ…第3次韓流ブーム…桑畑優香(ライター・翻訳家)
[ 撮影・木谷朋子 ]
「モノ」の人気が先行…自然発生的に広がる
先月半ばの週末に新大久保に出かけた時のこと。山手線を降りて、びっくり。ホームに人がぎっしりで、身動きが取れなかったのだ。第3次韓流ブームを、まさに肌で感じた出来事だった。
去年7月にガールズグループのTWICEが日本デビューを果たしてから1年。昨年末のNHK紅白歌合戦出場や、男性7人組の防弾少年団の音楽チャートでの快進撃がニュースになるなど、KPOPは今、日本の若者たちの間で爆発的な人気を呼んでいる。
「もう終わった」と言われた韓流に何が起きたのか。実はブーム復活には、数年前から兆しがあった。
2016年秋。韓国旅行に出かけた私は、始めたばかりのインスタグラムに、高さ30センチほどのパフェの写真を載せた。すると、見知らぬ人から「いいね!」がたくさん。相手のプロフィールを見ると、明らかに日本人(しかも若い女の子)の名前がハングルで書いてある。ほとんどが「98ライン(98年生まれ)」前後の世代だった。ほどなく新大久保でチーズタッカルビが大流行し、原宿の竹下通りには韓国コスメのお店が軒を並べるように。テレビや雑誌も韓流ブーム再燃を取り上げるようになった。つまりメディアがブームを後追いで紹介することになったのだ。
NHKで「冬のソナタ」が放送され、ヨン様が40代以上の女性のハートをわしづかみにしたのは、2004年のこと(第1次ブーム)。その後、地上波でチャン・グンソクの「美男<イケメン>ですね」がオンエアされ、ファンの年齢層は20代~30代に拡大。さらにKARAや少女時代を代表とするKPOPの台頭も重なり、2012年前半に第2次ブームのピークを迎えた韓流。
今回の第3次ブームがこれまでと異なるのは、コスメやファッション、スイーツなど「モノ」の人気がドラマや音楽に先行していたこと。そして、テレビや雑誌が火付け役となったのではなく、自然発生的に広まっていったことだろう。
背景にあるのが、インスタグラムをはじめとするSNSだ。今の20歳前後は、幼いころからネットやスマートフォンに親しんできた世代。自らが好きなものを発信する年齢となった彼女たちが、韓国の「カワイイ」を発信するように。掌の中で密かに拡散していたブームが、チーズタッカルビ店の行列やKPOPのブレークなどで可視化され、大人たちがやっと気づいた、という構図なのだ。
韓国好きの10代と話してみると、「子供のころから祖母や母親の影響で『冬のソナタ』を見たりKPOPを聞いたりしていた」という人も多い。ヘイトスピーチについては「小学生だったからよくわからない」という声もあり、驚かされる。
ブームを受け、この春大学では韓国語の履修者が急増したと聞く。軽やかに国境を越え始めた、新たな世代が築く日韓関係に期待している。
(2018.08.15 民団新聞)