掲載日 : [2004-09-08] 照会数 : 4152
<関東大震災>虐殺事実、風化させまい(04.9.8)
[ 中央会館で開かれた81周年関東大震災追念式 ]
歴史歪曲に危機感…共生へ教訓生かす正念場
1923年9月1日に発生した関東大震災から81年目のこの日、在日同胞や日本人有志らは各地で追悼の集いを開き、歴史の風化と歪曲を許さない、との覚悟を新たにした。東京都教育委員会が去る26日、来春開校予定の中高一貫校の社会科(歴史分野)用に史実を歪めた不適格教科書を採択するなど、臭いものに平然とフタをしようとする時代の流れに、危機意識が広がっている。
韓国中央会館で開かれた「関東大震災第81周年追念式」で、東京本部の李時香団長は、「虐殺の事実を明白にしない一方で、歪曲された歴史教科書が採択された」と指摘した。これは、同胞たちの怒りと無念の心情をそのまま代弁したものだ。
関東大震災は、未曾有の被害をもたらした自然災害としてだけではなく、首都圏中枢部を中心に朝鮮人、中国人、日本人社会主義者らが組織的に大量虐殺された、日本の近現代史上でも比類のない暗黒事件として刻印されている。
しかし、日本社会の一部では最近、この日を単なる「防災の日」とするだけでは足りず、虐殺の舞台となった東京都を中心に、災害時の「外国人騒擾説」が流布され、その治安対策が公に論じられるまでになった。
外国人犯罪の増加説をテコに、加害者が加害の歴史にフタをし、あたかも「被害者」になりかねないかのように意識下に刷り込もうとするものだ。この倒錯した論理はさすがに批判を浴び、世論化工作は下火になったものの、水面下の動きに変化はない。
虐殺そのものを「第一の罪」とするならば、真相・責任を糾明しようとしない「第二の罪」にとどまらず、記憶や教訓をないがしろにし、新たな迫害の可能性を開く「第三の罪」の進行に、在日同胞や良識ある日本人の警戒心は強まる一方だ。
しかし、同胞たちはまた、95年1月の阪神淡路大震災の被災中心部が、韓国・朝鮮人、中国人、ベトナム人など外国人集住地区でありながら暴動・略奪はなく、国籍・民族を意識することのない助け合いがあったことを知っている。
その被災地区の民団兵庫県本部で1日、「防災対策委員会」が発足、委員長に就任した河政淳氏は「災害は国籍・民族を問わず襲ってくる。民団は進んで地域社会に貢献したい」と語った。関東大震災81周年に際して、日本の時代的空気に危機意識を持つ半面で、この言葉の意味を全体同胞社会が共有し、日本社会に発信する必要性も高まっている。
(2004.9.8 民団新聞)