掲載日 : [2004-10-06] 照会数 : 4822
外登証トラブル各地で 徹底欠く〞弾力運用〟(04.10.6)
「外国人排撃の一環」の声も
昨年10月、法務省出入国管理局と東京都、警視庁の三者が連携し、「不法滞在外国人対策強化共同宣言」が発表された。不法滞在者の処分という大義名分のもとに、外国人の取り締まりを強化したものだが、明らかに在日とわかる人間をねらい打ちにした事例も一方で目立ち始めた。外国人登録証(外登証)の呈示をめぐるトラブルである。外登法の改正運動の結果、常時携帯制度は廃止には至らなかったものの、「91年協議」を終えて韓日両国が交わした覚書には、「在日韓国人の立場に配慮した常識的かつ弾力的な運用をより徹底するよう努力する」と明記され、92年4月の法改正の付帯決議でも謳われている。にもかかわらず、事態は逆戻りしているようだ。
A氏は8月末、韓国旅行を終えて仙台空港に戻った時に入国審査官から外登証の呈示を求められた。他の空港では求められたことがなく、その若い担当官が非常に傲慢な態度であったことから、窓口でもめ、売り言葉に買い言葉の末、別室に連れて行かれ2時間も拘束された。
後日、仙台入管に出向いてこの件を話したところ、「その職員にはよく言っておいた」との答えだったという。
B氏は2月、徳島自動車道のサービスエリア付近でスピード違反で反則切符を切られた際、外登証の呈示を求められた。B氏は「外登法の改正以後、常時携帯要件については弾力的に運用することになっているし外登法自体が人権抑圧的な法律だと国連人権委員会も認めている」などと反論したが、結果的には提示しなければならなかった。相手は若い警察官で外登法については不勉強。今後勉強すると言ったという。
B氏は「外登法改正運動の趣旨が生かされていない。金字塔が曇っている」と嘆く。
次のケースは悪質だ。昨年12月、東京・代々木。C氏の奥さんが夜、中華料理店を閉めて帰ろうとしたところ、いきなり5、6人の警官に取り囲まれ、「外国人登録を見せろ」と言われた。外登法が改正され、最近は携帯する習慣がなかったC氏の奥さん。するとパトカーに乗せられ自宅へ。登録を見た警官は、「あるじゃないか」と言った。C氏は「石原都政が始まってからの外国人排撃の一環だろう」と言う。
これらはトラブルだが、弾力的運用をしているケースもある。
神奈川県に住むDさんは昨年春頃、実家のある山口で信号無視で捕まった。免許証を見た警察官は「神奈川から来られたのですか」と言うだけで、外登証の呈示にはまったく触れなかった。
そのDさんは昨年11月、韓国から所用で北海道の新千歳空港に降り立った。期限切れの旅券に数次再入国の許可スタンプが押されており、新規旅券に転載していなかったため、2通の旅券を所持していた。入国審査を終え、税関の申告台で若い女性の新米係官が2通の旅券に疑惑を持ったのか、「入国目的は、北海道には何日滞在」とたたみかけてきた。在日のことをまったく知らない係官にDさんは「居住、数日間」と仏頂面で答えたという。
最後に最近のケース。今年8月のソウルオリニジャンボリーに参加することになった福岡の小学生E君。親が出入国カードに記載した外登番号が違っていたため、入管職員から少し足止めをくらったが、引率の民団幹部が携帯義務が生じない小学生であること、参加者名簿などでの確認が可能であることを説明し、出国した。
外国人犯罪の増加や北韓のら致事件に絡んで、排外主義的風潮がはびこっているのが背景にあると思われるが、当局の行きすぎた管理が進行し、在日外国人が不当な扱いを受けることは人権問題上、絶対に許すべきではないとの姿勢を改めて確認する必要がありそうだ。
(2004.10.6 民団新聞)