掲載日 : [2004-10-06] 照会数 : 7996
演劇界にはばたく在日3世 パク・ソヒ(04.10.6)
[ 寺島しのぶとパク・ソヒ ]
「楡の木陰の欲望」主演
重い役…自分に合う
母国の作品にも出たい
ノーベル賞受賞作家、ユージン・オニールの代表作「楡の木陰の欲望」。憎悪、復讐、嬰児殺しを扱い、人間の禁忌をえぐりだす愛の物語は英米で上演を禁止された衝撃作である。10月から日本で上演される「楡の木陰の欲望」のヒロイン・アビーを務めるのは、03年日本映画界の女優賞10冠に輝いた寺島しのぶ。そして、アビーを愛する主人公の青年・エバンを02年にデビューした若手俳優のパク・ソヒが演じる。2人に聞いた。
■□
パク・ソヒ インタビュー
−−この作品のエバン役は、演じるのが難しくありませんか?
僕自身、元々重い役に合う性格なような気もするんですけど(笑)。この作品は原作者のユージン・オニールが劇的なだけではなく、人間の根源的な欲望や葛藤をきちんと描いているので、演出家との共同作業を通してちゃんと理解していけば、なんとかエバン役には到達できるだろうと考えています。
−−この作品のみどころは?
素晴らしい役者たちの演技と、まぁ、僕以外のことですけど(笑)。その迫力とユージン・オニールの力強い戯曲、アラン・アッカーマンの演出力ですね。父親に挑み、周りのものすべてに挑んでいくようなエバンの姿は今の自分とオーバーラップしているようにも思います。そういうところを感じていただけたら、おもしろいのではないかと思います。
−−テレビや映画への進出は考えていますか?
今はこの舞台に集中していますが、昔から夢は映画俳優でした。
−−どんな映画が好きですか?
古い白黒映画の女優に憧れていたんですね。韓国映画も大好きです。最近では「殺人の追憶」のソン・ガンホさんをすごいな、と思ったし、「オールド・ボーイ」のチェ・ミンシクさんも大好き。彼らも舞台出身なんですよね。韓国ドラマも大好きです。家では韓国番組のケーブルテレビしか観ないくらい。「順風産婦人科」や「ピアノ」が好きですね。韓国の映画やドラマのオファーがあれば当然受けたいですね。今年、語学留学した理由は、昔から韓国人として母国語を喋りたいなという気持ちと、いつかは韓国で仕事をしてみたいという気持ち。このふたつの気持ち半々で行ったので。食事……、人……、韓国は大好きですね。時間があれば行ってまた韓国語を勉強したいです。
−−今後どういった役をしてみたいですか?
いい作品に出られるのであれば、どんな役でも。僕自身が在日として生きているので、いつか韓国と日本の間で揺れ動く人物だとか、在日にまつわる優れた物語があれば演じてみたいですね。
−−韓日の「懸け橋」的な存在には?
最近は「懸け橋」を作る前に韓国と日本で自由に往来できる風潮があるじゃないですか。「懸け橋」という定義はいらない気もします。でも、やはり在日は「特別」な立場だと思うし、その立場しかできないような何かがこの世界にあると思いますけど。
−−寺島しのぶさんと主演ということですがプレッシャーは?
今回、初めてお会いしたのですが、緊張してやりにくいってことはないです。「今、日本で一番の女優」でそんな「日本一の人」と共演できることは素直に嬉しいし、刺激を受けますね。
−−読者にメッセージを。
暖かく見守って応援してください。もし、読者の中に創作に携っている人がいるなら、僕たちの存在って歴史的にも政治的にも題材になることがいっぱいあるだろうし、僕自身も常に構想しているので、本物で力強いものをいつか一緒に創りたいですね。
■□
寺島しのぶ インタビュー
演技や相手に正直な人
−−アビー役を演じるに当たって気をつけていることは?
アビーとして生きることです。
−−在日韓国人の俳優や歌手が活躍していることについてどう思われますか。
私たちがひとつひとつの国を尊重しつつ、それぞれがひとつの作品に望むというのはとても素晴らしいと思います。
−−パク・ソヒさんを役者としてどう思いますか?
自分の演技に対しても相手に対しても、とても正直な人だと思います。
−−パク・ソヒさんは今回の共演を「素直に嬉しい」と言われていますがいかがですか?
嬉しいですねぇ、そんなこと言ってもらえて。私もパクさんにいろんなものをもらって「楡の木陰の欲望」が必ずいい芝居になると実感しています。
■□
韓国へ語学留学 パク・ソヒ(朴昭熙)
75年生まれ。千葉県出身の在日3世。早稲田大学商学部卒業。文学座付属演劇研究所第41期生。02年、「BENT」で鮮烈なデビューを果たす。今年夏には韓国・延世大学語学堂に留学。
■□
あらすじ
1850年、アメリカ東部を舞台に農場主の家庭に生まれた青年・エバン。父と2人の兄との憎悪と確執。そして、父が娶った若く誘惑的な妻・アビーと激しく惹かれあい、生じる数々の悲劇を描く。
演出 ロバート・アラン・アッカーマン。10月18〜31日 東京・北千住THEATRE1010。S席8000円、A席5000円。各プレイガイドで発売中。問い合わせはTHEATRE1010(℡03・5244・1010)まで。
■□
読者5組10人を招待
「楡の木陰の欲望」20日(水)19時上演回に民団新聞読者5組10人を招待します。
希望者は往復ハガキに、郵便番号、住所、氏名、電話番号を明記の上、〒120‐0034東京都足立区千住3‐92千住ミルディスI番館10階 THEATRE1010「民団新聞プレゼント」係まで。12日必着。
(2004.10.6 民団新聞)