掲載日 : [2004-11-04] 照会数 : 3924
「外国人庁」設立後押し 集住15都市が「宣言」(04.11.3)
[ 全体会で「豊田宣言」を採択した15市町の首長
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経済界と連携強化…政府に働きかけへ
南米からの日系人労働者ら外国人が事実上、重要な構成員となっている15の市町で構成する「外国人集住都市会議」は10月29日、愛知県豊田市で会議を開き、日本経済団体連合会の取りまとめた「外国人受け入れ問題に関する提言」への支持をうたった「豊田宣言」を発表した。これから経済界との連携を強化しながら、外国人住民に係わる課題の早期打開を目指す。
「会議」には15の市町から首長が出席し、「労働」「コミュニテイ」「教育」の各分科会に分かれて外国人住民の暮らしやすい町づくりに向けた課題と現状を語り合った。
3つの分科会報告を総合すると、外国人市民の抱える課題は、各市町村の懸命な努力にもかかわらず、単独では根本的な解決の糸口が見えないことも多いことが分かった。
社会保障では、医療保険制度の見直しや、労働環境の整備の問題が大きい。静岡県浜松市や愛知県豊田市では、外国人の半数が健康保険に加入していない。教育では、小・中学校での日本語教育の充実や子どもたちの不就学対策が指摘された。
これらは各省庁が連携して施策を展開しないと根本的な解決は難しい。「会議」は01年の「浜松宣言」以来、たびたび制度改革を訴えてきた。にもかかわらず、縦割り行政の壁に阻まれているのが現状だ。これについては日本経済団体連合会が4月、外国人受け入れ問題に関する提言のなかで「外国人庁」(仮称)、あるいは「多文化共生庁」(仮称)の創設を提言しているところ。各分科会では提言を支持する発言が相次いだ。
これに対して総務省自治行政局国際室の担当室長は「外国人関係の仕事すべてを吸い上げて一つの官庁をつくるのは難しい」としながらも、「総合的な調整窓口は望ましい。将来的には一元的な管理に向けて議論を深める必要がある」と賛同した。
この後、外務省の関係者は「提言を重く受け止めている。内閣官房の下に関係省庁連絡会議を設けて外国人問題を扱えないか。実現に努める」とさらに踏み込んだ発言を行って注目された。
引き続き全体会で総括討議を行い、「外国人住民とともにつくる活力ある地域社会をめざして」との副題で豊田宣言を発表した。
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「外国人集住都市会議」とは
外国人市民の抱える問題の解決にあたるため浜松市の呼びかけで01年、南米日系人の多住する13市町で発足した。これまで「浜松宣言および提言」や東京会議における「共同アピール」をまとめ、外国人にかかわる法律や制度の見直しについて関係省庁に働きかけを行っている。
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外国人問題で初答申 外務省海外交流審議会
外相の諮問機関である海外交流審議会は「変化する世界における領事改革と外国人問題への新たな取り組み」と題した答申をまとめ、この日の外国人集住都市会議で明らかにした。同審議会が外国人問題に触れたのはこれが初めて。
提言は在日外国人問題で①雇用、居住、社会保障にかかわる状況の改善②義務教育年限の外国人の子どもの教育機会の確保③外国人労働者とその家族への語学教育等の支援を「喫緊の課題」としている。
解決のためには「一層深い戦略に根ざした省庁横断的な対策をとる必要がある」としている。
(2004.11.3 民団新聞)