掲載日 : [2004-11-10] 照会数 : 4540
<兵庫県豊岡市>被災の後遺症重く 台風23号(04.11.10)
[ 浸水に見舞われ頭を抱える金実さん ]
【兵庫】台風23号の被災地の一つ、兵庫県北部の豊岡市では市街地の約90%が水没し、水が引いたいまも後遺症に悩んでいる。市内を流れる一級河川、円山川が決壊したツメ跡はすさまじい。特に右岸が決壊した梶原と庄境の両地区では廃棄しなければならない家財が山積みのまま放置されており、道路には泥の臭いがまだ残っている。
床上・床下浸水20件
民団兵庫が見舞金伝達へ
民団但馬支部の金鐘民副団長によれば、豊岡市内の同胞被害は床上浸水が16軒、床下浸水が4件にものぼり、想像以上の被害をもたらした。
梶原地区で高周波加工を営む金実さんの居宅と工場は道路から40㌢も高いところに建っているにもかかわらず、天井近くまで川水に浸かった。家財の泥は洗い流したものの、まだ乾ききるまでには至っていない。
金さんはいまだに当時の恐怖がさめやらない様子で語る。「台風の後、雨の降る日が多くてね、すっきりしません。90年の水害でも水が来ましたがね、それでも床上浸水は35㌢程度でした。こんな恐ろしいことは生まれて初めてでした」と、力なく居宅から100㍍先の堤防に目をやった。
同地区で娘さんが営む焼肉レストランも濁流と泥水の犠牲となった。店は道路より1㍍高くしてあるが、ひとたまりもなかった。
店主の月子さんは「厨房の冷蔵庫など6個がダメになりました。こんな高いところまで水が上がるなんて想像もしなかった」と話す。
庄境地区で建材業を営む千仁秀さんは「ドーンという音がしたかと思うと、水が頭の高さまで来ました。本当にあっというまでした。死人が一人も出なかったのが不思議なくらいです」という。「1階はもう今年は使えません。完全に乾かないと虫がわいたりカビが生えたりしてね」。
壁を見ると、水位を示す線の上にはグロテスクなカビが横に長くはっていた。
千さんはどっしりと重くなった風呂敷包みを取り出した。なかからまだ乾かないままの族譜が出てきた。弟の正秀さんが「大事なものだからわたしが自宅に持ち帰ってきれいにしましょう」と引き取った。正秀さんは「店舗の場合は床上も床下も一緒ですよ」という。
民団兵庫県本部は5日開いた支団長会議席上、被災者全員に取り急ぎ見舞金を伝達することを確認した。
(2004.11.10 民団新聞)